- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県鳥羽市
- 広報紙名 : 広報とば 令和7年7月1日号
■ショウジョウケノリ
穏やかな磯で冬から春に見かける真っ赤な毛のような海藻、ショウジョウケノリ。漢字で書くと猩猩毛海苔となるらしい。猩猩とは中国に伝わる妖怪で、それをモチーフにしたものが能の演目の中にある。その中に出てくる猩猩は海に棲む精霊で、赤髪の装束で表されることから、そのように呼ばれているとか。たしかに、長く伸び、塊のようになって磯にゆらめく姿は、赤い獣や妖怪のように見えなくもない。そのせいではないだろうが、春先になると、「あの赤い毛むくじゃらの海藻は何?」とか「あの赤いのは食べられるの?」と問い合わせが時々ある。さっとゆがくと柔らかくなり、風味も普通の海藻だが、毛玉のような食感で食べごごちは良くない。
さて、この妖怪、もとい、ショウジョウケノリの仲間は非常に繊細な赤い毛状の体であり、真夏を除いてほとんど年中、磯や係留ロープなどに付着しているものを見ることができる。手に取り、水に広げてよく見ると、非常に細かく枝分かれしておりとても美しい。顕微鏡で観察すると、ルビー色をした細長い細胞が整然と組みあがっているのがわかる。見とれてしまわないだろうか。とても妖怪とは思えない。いや、その怪しいまでの美しさが妖物のそれなのかもしれない。
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