文化 ふるさと再発見 Re:discovery Omihachiman 第83回

■文化財の保存修理(7)
県指定有形文化財 西川庄六邸

新町通りに並ぶ八幡商人の家々。その一つに西川庄六邸があります。西川庄六家は、寛文10(1670)年に西川利右衛門家の二代目重数(しげかず)から分家して始まり、その後、蚊帳や綿を取り扱う大店(おおだな)となりました。現在はメルクロス株式会社として、東京日本橋に本社を構えています。
庄六邸の間口は約52mで、通りの3分の2以上を占めており、現在残っている八幡商人の邸宅の中では屈指の大きさを誇ります。また大店のシンボルである「見越しの松」や、通りに面した「見せ蔵」も備えており、観光の名所としても有名です。
庄六邸は、主屋の鬼瓦にヘラで天明5(1785)年と書かれていることから、この時代に建築されたものと考えられています。その後、時代とともに幾度かの修理や増築が行われ、現在の姿となりました。はっきりとした年代や工事内容が分かるものは多くありませんが、例えば、台所の大黒柱には弘化4(1847)年の箱入り祈祷具が打ち付けられており、この頃に台所周りの修理が行われたものと推察できます。また外観は2階部分の格子状の窓が特徴的な「虫籠(むしこ)町家」と呼ばれる構造をしていますが、これは、大正時代に座敷部分の平屋建を2階建に増築した時にデザインされたものです。他にも、現在の通り沿いは繊細な格子や出格子となっていますが、かつて店部分の表構えは摺り上げ戸であったことがわかっています。
このように現在まで大切に受け継がれてきた庄六邸ですが、地震などの自然災害から保護するため、令和2~4年度にかけても、耐震補強修理工事を行うことになりました。耐震補強工事は、地盤調査に基づいて建物の補強を行い、主屋、でみずの間の屋根工事では、建物の安定や瓦の固定のために用いられた重量のある瓦土を取り除き、屋根にかかる負担を軽減する工事を行いました。瓦も文化財であるため総入れ替えではなく、使えるものは充当されています。なお、葺かれていた瓦には、「瓦屋平四郎」「瓦屋甚兵衛」などの工人の名前や「江州八幡多賀」と刻印された、いわゆる八幡瓦が用いられていました。このほかに左官工事や建具の修理を行い、令和5年3月に修理工事が終了しました。
庄六邸では、扇子やお菓子などの雑貨を販売する店舗が、11月16日(日)まで期間限定で出店しています。外観はもちろんのこと、内部の一部も見ることができますので、ぜひこの機会に建物の意匠をご覧ください。
文(文化振興課・山田)