文化 佐川美術館アートコラム(93)

■「いま」を描く日本画家

佐川美術館
学芸員:栗田 頌子(くりたしょうこ)

絵画作品の鑑賞のポイントとして、画家が何を描いたのかを知ることが大切です。多くの画家にとって主題(テーマやモチーフ)は、その画家の生きざまや思いが詰め込まれるだけでなく、生涯の創作活動を通して画家の代名詞ともなります。モネであれば「睡蓮(すいれん)」、平山 郁夫(ひらやまいくお)であれば「シルクロード」など、そのテーマだけで画家の名前を連想させてくれます。
戦後に活躍した日本画家の横山 操(よこやまみさお)(1920-1973)の場合、画家が見た「いま」(自然現象や現代的な構造物)をテーマに描いて一世を風靡(ふうび)しました。代表的なものは、鹿児島を訪れた際に偶然遭遇した桜島の噴火や、日本の高度経済成長によって建造された送電塔をはじめとした構造物、下町の生活や人間の営みを感じさせる風景などです。
操は日本画の在り方について、「過去でも未来でもなく、いま描いて生活している現在でなければならない」と語っています。操の言う「いま」とは生きている時代や実生活という現実を指しており、自然現象や現代的な建造物を通してこの思いを描き出しました。大迫力でエネルギーに満ちあふれた作風で「いま」が表現された作品は、美しいだけでなく人々に親近感や共感を与えることで人気を博し、操の代名詞となりました。
佐川美術館で開催中の「戦後日本画壇の風雲児 日本画家 横山操展」では、初期から晩年までの約60点を展観します。操が生きた「いま」が飾ることなく素直に表現された作品の数々をご堪能ください。

※開館情報は、佐川美術館ホームページでご確認いただくか、電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください。