文化 シリーズ 福知山の文化財 収蔵資料紹介(86)

■「提灯(ちょうちん)」
福知山市教育委員会 所蔵

古くは中国から日本に伝来したといわれている提灯。「提」は手にさげる動作を意味し、現在でいう懐中電灯や照明の役割をしていました。
中国から伝わった提灯は、竹かごのようなものに紙を貼り付けた簡素なもので、現在のような折りたたみのできる提灯の原型ができたのは室町時代の終わり頃とされます。その後、日本独自の蛇腹状に折りたたむ形状へ進化し、安土桃山時代から江戸時代初め頃に祭礼や戦場などで大量使用されることで技術が上がり、軽くて簡易な形に発展します。さらに江戸時代中期になると、ロウソクが大量生産できるようになり価格が下がったことから、庶民の間に広く普及するようになりました。
提灯は主に「骨」「火袋(ひぶくろ)」「加輪(がわ)」と呼ばれる3つの部位により構成されています。提灯の本体となる火袋は、骨といわれる細い割竹などを螺旋状に巻いた枠に紙を貼り覆いをした部分で、上下の口を加輪で挟んで伸縮できるためコンパクトに保管できます。
写真(1)は三和町上川合の方から寄贈された弓張(ゆみはり)提灯です。竹弓の弾力を利用し火袋を上下にしっかりと固定しています。製作された年代は不明ですが、ころんとした丸い形に墨書きで名前と家紋が入っています。
写真(2)は旧菟原小学校から寄贈された馬上(ばじょう)提灯です。火袋は大半欠損していますが、柄は原型を留めており、写真(3)のように漆塗りの鞘状の中には伸縮可能な約20cmのクジラの髭が収納されています。クジラの髭は適度な柔軟性と強度を併せ持ち、加工しやすいため、揺れを伴う馬上で少しでも灯りを安定させるための免震装置の役割を担っていたと考えられます。
明かりを灯すという役割を持つ提灯。現在では、浅草の雷門のようなシンボルや、祭りの照明、居酒屋の赤提灯のようなネオンサインとして、生活に彩りを添えてくれるアイテムのひとつです。
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