- 発行日 :
- 自治体名 : 京都府福知山市
- 広報紙名 : 広報ふくちやま 2025年8月号
■「漆塗り竪櫛(たてぐし)」
所蔵:福知山市教育員会
竪櫛とは、現在使われるような横に長い横櫛とは異なり、縦長で歯の部分が特に長い櫛のことを言います。
日本では少なくとも縄文時代から骨角製や竹製の竪櫛が使用され、土偶(どぐう)や人物埴輪から、竪櫛を髪に挿して頭部を飾っていたと推定できます。現在一般的で私たちに馴染みのある横幅の広い横櫛は古墳時代の前期末頃に朝鮮半島から伝来したと考えられ、古墳時代の終末期に竪櫛が廃れても、現代まで脈々と使われ続けています。
写真の竪櫛(本紙参照)は、前田の八ヶ谷古墳の埋葬施設内(石棺)から出土した竪櫛の頭部で、同時に出土した他の副葬品が示す年代観から5世紀のものと考えられています。
この竪櫛を詳しく観察してみると、頭部幅5・2cmの比較的大きなもので、竹を薄く縦に裂いた細長い27本の材を束ねてU字状に曲げ、頭部の中央屈曲部分を糸のようなもので結んで縛っているようです。歯の部分は頭部で折り曲げていますので全部で54本になります。櫛全体には材を固めて補強するために漆が塗られています。本来あるべき櫛の歯の部分は残念ながら残ってはいませんが、漆の防腐効果と保存効果によりかろうじて頭部の部分が残ったものと考えられます。
竪櫛の出土は全国的に見ても少ないため、一般的に広く使われていたものではなく、祭事や特別な日に特別な人が髪に飾るなど、特別な意味で使用されたのかもしれません。
八ヶ谷古墳から出土した漆塗り竪櫛は夜久野町化石・郷土資料館で展示しています。ぜひご覧ください。
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