くらし 未来へつなぐ平和のバトン(1)

戦後80年を迎えた今年、舞鶴市が「引き揚げのまち」の歴史をどのように次世代へ、そして未来へつなぐのか。
今年の平和祈念式典は、若者から高齢者まで全員が主役となり、それぞれの思いを胸に臨みます。
参加者が自ら創り上げる、平和をつなぐ舞鶴市の式典に向けた取り組みを紹介します。

■平和祈念式典
日時:10月12日(日)13時~16時
場所:総合文化会館
内容:
・第一部…式典(式辞、合唱、折り鶴アートの披露 など)
・第二部…市民音楽劇「海のその先」

問い合わせ先:
引揚記念館【電話】68·0836
文化振興課【電話】66·1019

■次世代が歌い継ぐ「引揚者を迎える歌」
第二次世界大戦後、舞鶴港へ引き揚げた人々を温かく迎え入れた市民の心は、歌となり今に伝えられています。それが、当時の中学生が歌った「引揚者を迎える歌」です。長らく途絶えていたこの歌を、令和元年に若浦中学校の生徒たちが復活させました。
そして今年、若浦中学校の生徒が市内の全中学校に呼びかけ、各校の代表と、平和祈念式典で合唱します。式典に向けた打ち合わせでは「戦争を経験していなくても、歴史を広める役割は担える」とメッセージを送り、若い世代が未来へ平和のバトンをつないでいます。

若浦中学校3年 山本 颯姫 さん
引き揚げの歴史を深く学んできた学校として、当時の様子を思い浮かべながら歌の練習を重ねてきました。この歴史を未来へつなぐという思いを共有し、心を一つにして歌いたいと思います。
私にとって、戦後80年は遠い過去の出来事ではありません。戦争は今も世界のどこかで起きていて、とても身近な問題です。同世代の人たちには、戦争や引き揚げの歴史を怖いものとして避けるのではなく、自分から知ってほしいです。そして今回の合唱が、舞鶴市民としてこの歴史をずっと心に留めておくきっかけになってほしいと願っています。

■引き揚げの記憶を舞台でつなぐ「市民音楽劇」
「市民とともに引き揚げの史実を文化で発信する」をコンセプトに、市民参加型のオリジナル音楽劇を上演。舞鶴などを舞台に引揚者を温かく迎え入れる市民や家族の帰りを待つ人々の思いを表現します。
この舞台には、6歳から80歳まで、幅広い世代が参加します。戦争を知らない世代が、演技や歌を通して、当時の人たちの体験や思いを表現することで、一人ひとりが平和の尊さを深く心に刻みながら、本番に向け練習を重ねています。
市民の熱演と心を揺さぶる歌声をぜひ会場でご覧ください。

市民音楽劇参加者 亀井 志衣菜 さん
市民音楽劇では、シベリアに抑留されている兄の帰りを待つ妹を演じます。
これまで戦争=怖いという印象しかありませんでしたが、戦争の裏側には帰りを待つ家族の悲しみや無事に帰ってきてほしいと願う人々の思いがあったこと、そして、出征した人もシベリアや戦地から、家族を思い懸命に生きたことを、音楽劇を通して知りました。
誰にとっても良いことがなく、悲しい思いをする戦争を、これから先の未来を背負っていく私たち
は2度と繰り返してはならない、そんな覚悟と平和の尊さを見ている人に伝えられたらと思います。

■市民が紡ぐ「折り鶴アート」
市民参加型の取り組みとして、戦後80年を記念するシンボルデザインを、平和への祈りを込めた約2万5千羽の折り鶴で制作中です。制作にあたり、取り組みを知った市内外の人から、多くの折り鶴が寄せられました。
この作品は、戦争の記憶を風化させず、平和の願いを次の世代へと手渡す強い願いの結晶です。「この先もずっと戦後であり続けますように」「当たり前のことが当たり前にできる世界であ
りますように」とそれぞれの思いの込められた作品を式典会場でご覧ください。

担当:引揚記念館