文化 シリーズ「木津川市の文化財を巡る」第87回

■石造十一面観音立像(せきぞうじゅういちめんかんのんりゅうぞう)(通称:動観音(ゆるぎかんのん)) 市坂区
幣羅坂(へらさか)神社に隣接する観音堂の本尊で「動観音(ゆるぎかんのん)」「動仏(ゆるぎぼとけ)」の愛称で親しまれています。花崗岩(かこうがん)で高さ2m31cmの舟形光背(ふながたこうはい)を負う1m90cmの十一面観音立像を半肉(はんにく)彫りで表します。光背正面や側面に銘が刻まれていて、寄進者名などと共に、大永(だいえい)4年(1524)の年号があって、造立(ぞうりゅう)された時期が判ります。室町時代は石仏の小型化が進むため、この時期で等身大の大きな石仏は、珍しい存在です。
右手に錫杖(しゃくじょう)を持つ十一面観音は「長谷寺(はせでら)式」と呼ばれています。中世には、春日社第四殿の祭神である比売神(ひめがみ)の本地仏(ほんじぶつ)は長谷寺十一面観音の姿とする説があり、この像には「春日大明神御作(かすがだいみょうじんおんさく)」との伝承もあって、春日信仰が造像背景にあると考えられます。堂内に安置されているため保存状態も非常によく、幾つもの意義を有していることから、令和6年に市指定文化財となりました。

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