- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府池田市
- 広報紙名 : 広報いけだ 2025年3月号
■CAR-T療法と二重特異性抗体療法について
血液内科部長 片岡 良久
再発難治性の造血器腫瘍(血液がん)、特にB細胞性・形質細胞性腫瘍に対して、従来行われてきた一般的な抗がん剤治療や造血幹細胞移植療法以外の新規化学療法として、CAR-T療法(キメラ抗原受容体T細胞療法)と二重特異性抗体療法が近年実臨床で施行可能となっています。これらの治療は臨床試験で高い効果が確認されており、標準治療や再発後の救援療法が効果を示さない患者にとって重要な治療選択肢となっています。しかし全ての患者に使えるわけではなく、適応疾患や副作用についての理解が必要です。
CAR-T療法は、がん治療における革新的な免疫療法の1つです。この治療法は患者自身のT細胞の遺伝子改変を行い、がん細胞上の標的分子に結合させて抗腫瘍効果を発揮するという治療です。
二重特異性抗体とは、複数の標的分子に同時に結合することができる抗体で、患者自身のT細胞と腫瘍細胞の両方に結合、架橋することで抗腫瘍効果を発揮します。
しかし、これらの治療法にはリスクも伴います。過剰な免疫反応が生じることにより、サイトカイン放出症候群や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群と呼ばれる特有の副作用が引き起こされ、重症の場合、入院や集中治療が必要な場合や、生命に危険が及ぶこともあります。これら副作用の管理には、早期発見と適切な対応が必要で、患者へ十分な説明と医療職員間の情報共有が重要です。