文化 八尾歴史物語 六十五巻

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■文化財と観光(1) ~江戸時代の旅(前編)~
江戸時代、街道や宿場の整備が進みました。移動が制限された庶民であっても、旅の目的が寺社への参詣であれば、幕府から旅を認められました。その道中で各地の名所を観光しながら、寺社をめざすことが多かったようです。今回は、当時の旅のありようを示す、神社や村の出入口などで常夜灯(じょうやとう)として使われた市内に残る石灯籠(とうろう)を紹介します。
「一生に一度はお伊勢参り」と言われるように、江戸時代の旅の行き先のほとんどが伊勢神宮に参詣する「伊勢参り」でした。慶安3年(1650年)から約60年ごとに特に規模が大きく、より多くの人々が訪れた「おかげ参り」が起こりました。
参詣は一人でするのではなく、「講(こう)」と呼ばれるグループをつくり、旅に必要な費用をまとめ、講の中から代参者(だいさんしゃ)を決めて寺社を参詣しており、市内でも村々で伊勢講が組織されていました。
旧大窪村の御祖(みおや)神社跡に、おかげ参りを記念して建てられた「おかげ灯籠」があります。最も参詣者が多かったとされる文政期のおかげ参りの翌年の天保2年(1831年)に建てられ、台座に「おかげ」と刻まれた市内で唯一のものです。火袋の下の中台には伊勢神宮を示す「太神宮(だいじんぐう)」と刻まれています。
その他にも伊勢信仰を示す伊勢灯籠が残っており、玉祖(たまのおや)神社にある文政四年(1821年)の「大神宮(だいじんぐう)」銘の灯籠は、石組み基壇の上に乗る高さ6メートルにもおよぶ立派なものです。伊勢参りが村にとって重要な行事であったことがわかります。
(つづく)

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