くらし COLUMN(コラム)

手話で語ろう(12)
手話は大切なことば
福島さん

※ろう者=聴覚に障がいのある人のうち、手話を意思疎通の手段として用いる人

私は熊本県で生まれました。生まれつき耳が聞こえず、両親が聞こえないことに対する知識がなかったこともあり、コミュニケーションの方法は身振りか簡単な筆談でした。話が通じないときに叱られたりもしました。小学校の時、耳が聞こえないことを悪く言われ、いじわるをされたこともあります。授業は先生の板書を写しただけで、話していることはわかりませんでした。質問したくてもできず、黙ったままの日々を中学まで過ごしました。
中学校を卒業してからは、母親の紹介で名古屋の織物会社で仕事をしました。聞こえない人は私1人でしたが、みなさんが優しく対応してくださいました。身振りで仕事を教えてもらい、それを見て覚えていきました。その後移った大阪の会社では、聞こえない人が他に1人いたようですが話をすることもありませんでした。
しばらくして北九州市へ移り結婚、そこで聞こえない友達ができて、手話というものを初めて知りました。それが私の手話との出会いです。それから少しずつ手話を覚えていきました。その後、娘が2人生まれ、娘たちは幼稚園に通い言葉を覚えていきました。保護者懇談は聞こえないため話も分からず行きませんでした。手話通訳者の派遣制度があることも知りませんでした。娘が自分で話を聞いていたと記憶しています。その後、娘たちも大きくなり、今では2人の孫にも恵まれ、娘が住む河内長野市で暮らしています。
私がもっと早い時期に手話を覚えていたら、自分の世界はきっと違ったものになっていただろうと思います。みなさんも手話を少しでも覚えてもらい、ろう者と出会った時に手話でお話ができたら、みなさんの世界も広がっていくと思います。手話は大切なことばです。ぜひ覚えてもらえると嬉しいです。

覚えておきたい簡単な手話
「晴れ」
両てのひらを相手に見せるようにあごの前で交差させ、同時に弧を描くように開く