- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府柏原市
- 広報紙名 : 広報かしわら 令和7年8月号
■「特権を持っているのは誰か?」
大阪教育大学 薮田 直子
私が担当している授業科目の中のダイバーシティ(多様性)の尊重に関する知識の中から「マジョリティ特権(privilege)」という概念について考えてみたいと思います。「特権」と聞くと、「特別に得られているもの」、「優遇や優先されていること」というようなイメージが浮かび、何か追加で得をしている状態を想像しますが、ここで言う「特権」の意味は「労なく手にできること・もの」。つまりその社会の「ふつう」の人に与えられている権利や日常をさしています。「与えられている」という表現がどうしても付加的な印象を与え、誤解を招きます。どちらかというと特別な扱いや、まなざしを「与えられない」権利が「特権」です。ううん…複雑になりすぎましたかね。
もしあなたが特別な目でジロジロ見られずに、スムーズに街を歩き、誰の助けもなく電車に乗り降りできるとしたら、それは社会の設備やシステムが「あなた仕様」になっているからです。「特権」について考えるとは、つまり社会構造を捉えるということです。多様な人と共生していく中で、優しさや思いやりはもちろん大切ですが、それだけでは解決しないこともあります。構造や特権に切り込んでこそ、問題の本質が見える時があります。
上智大学の出口真紀子先生は「自動ドア」のたとえを使って「特権」を説明しています。特権のある人は、人生におけるさまざまな出来事を自動ドアを通るように突破していけます。特別な労を個人で担わなくても、社会や構造の側が文字通り「自動で」扉を開いてくれるのです。しかも自動ドアの存在は、利用している人には気づかれにくい。動画で学ぶこともできます。「マジョリティの特権を可視化する‐ダイバーシティ推進の構造的な障壁を取り除くために‐」上智大学DiversityのYouTubeチャンネルからぜひ一度ご覧ください。
問合せ:人権推進課
【電話】072-972-1544