文化 ふじいでら歴史紀行 223

【アイセルシュラホールに大きな前方後円墳ができたよ! 2 墳丘と埴輪列】
アイセルシュラホールにできた大きな前方後円墳のジオラマには、皆さんにぜひ注目して見ていただきたいことが、たくさんあります。今回は、墳丘と埴輪列のお話をしたいと思います。
ジオラマの墳丘をご覧いただくと、交互に斜面と平坦面があり、三段になっているのがお分かりいただけるかと思います。これは段築(だんちく)と呼ばれています。墳丘をつくる際には3回に分けて、まず一番下の段の土を積み、少し内側にずらして真ん中の段の土を積み、最後に、また少し内側にずらして一番上の段の土を積むといった工法がとられているのです。ジオラマのモデルの仲姫命陵(なかつひめのみことりょう)(仲津山(なかつやま))古墳は三段につくられていますが、二段につくられた古墳もあります。何段にするかは、つくろうとする古墳の大きさにもよるようです。
いずれにしても、墳丘の土が盛られたら、次に各段の斜面に石を葺(ふ)いていく作業に入ります。ジオラマでも斜面に石を葺いた様子をあらわしています。まず、一番下に横方向に大きな石が並べられています。これは基底石(きていせき)と呼ばれています。そして、基底石から上に向かって縦方向に一回り小さな石が何本もの線のように並べられています。また、基底石から7cmくらい上には横方向にも一回り小さな石が線状に並べられています。これらの線状に並べられた縦横の石の列は、区画石列(くかくせきれつ)と呼ばれています。古墳の斜面に石を葺くには、まず区画石列を並べ、それで区画した内側をこぶし大の石で充填するという方法をとっているのです。
墳丘の各段の境目には平坦な面がめぐっています。また、最上段の頂上にも平坦面が設けられています。このような平坦面には埴輪が墳丘の周囲をめぐるように立て並べられています。ジオラマをご覧いただくと、数種類の埴輪があることがお分かりいただけると思います。(1)円筒埴輪、(2)朝顔形埴輪、(3)鳥形木製埴輪、(4)蓋(きぬがさ)形木製埴輪があり、(2)1本→(1)5本→(3)1本→(1)5本→(2)1本→(1)5本→(4)1本→…というように一定の法則で並べられています。
私もジオラマ制作の中で、一緒に埴輪を並べました。その中で、ちょっと困ったことがありました。限られた範囲の中で埴輪を並べようとすると、この法則に合わず、たとえば円筒埴輪を4本しか並べられない、あるいは6本並べないと隙間ができてしまう、といったことが起こったのです。このため、円筒埴輪の数の増減で調整した部分があります。1600年前、実際に大きな前方後円墳をつくる際にも、このようなことは起こった可能性も十分考えられると思います。昔の人々もいろいろと工夫をしながら埴輪を立て並べていったのでしょう。
皆さん、もう一度、ジオラマをじっくり見てみてください。立てられた円筒埴輪が5本ではなく、4本や6本になっているところを見つけることができるでしょうか。
(文化財保護課 新開 義夫)