- 発行日 :
- 自治体名 : 大阪府藤井寺市
- 広報紙名 : 広報ふじいでら 令和7年10月号
【アイセルシュラホールに大きな前方後円墳ができたよ! 4 いろんな形の埴輪たち】
墳丘に立て並べられた埴輪には、土管のような形をした円筒埴輪と、それとは別に、家や人物、動物、器材などを模した形象(けいしょう)埴輪があります。埴輪と聞くと、皆さんはどのようなものを思い浮かべるでしょうか。東京国立博物館にある、踊っているような様子をした埴輪など、よく知られたものがあり、まずそのようなものを考えられるのではないでしょうか。藤井寺市内から出土したものでも、重要文化財となっている3体の水鳥形埴輪など、いろんな形をしたものがあります。
では、前方後円墳のジオラマに立て並べられた埴輪を、あらためて見てみましょう。円筒埴輪の数が圧倒的に多いことに気付かれると思います。これに対して、家や動物、器材などを模した形象埴輪は、人を埋葬した後円部(こうえんぶ)の頂上と、前方部(ぜんぽうぶ)と後円部の接続部分近くで外側に四角く張り出した、造出(つくりだ)しと呼ばれるものの上面と周辺といった、限られた場所に樹立されていることが分かります。
後円部上では、一番外側に輪郭に沿って円筒埴輪と朝顔形埴輪が円形に立て並べられています。そして、その内側に盾形(たてがた)埴輪、靫形(ゆぎがた)埴輪といった形象埴輪、さらに内側に円筒埴輪と朝顔形埴輪を立て並べて四角い区画をつくります。その区画内に壇状の高まり(方形壇(ほうけいだん))をつくって表面に石を葺き、その上に形象埴輪を立て並べています。
方形壇の上に立て並べられているのは、家形埴輪、鶏形(にわとりがた)埴輪、蓋形(きぬがさがた)埴輪です。特に、家形埴輪は、屋根の形が入母屋造(いりもやづく)り、寄棟造(よせむねづく)り、切妻造(きりづまづく)りといった3つの種類があり、それぞれの大きさにも違いがあります。これらの家形埴輪は、古墳に葬られた人物、首長の死後の住居、屋敷をあらわしていると考えられています。ジオラマを見ていただくと、入母屋造りの家が最も大きく表現されていることをお分かりいただけると思います。この入母屋造りの家が、被葬者の魂が宿る家として埴輪であらわされたのです。
また、家形埴輪の両側には雄雌1羽ずつ、2羽の鶏形埴輪がいます。古代の人々にとって、夜明けを告げる鶏(にわとり)は光をもたらす神聖な鳥と考えられていました。このため、被葬者の魂が宿るとされる家形埴輪の近くに置かれ、魂を守る役割を担っていたとも考えられています。
いずれにしても、後円部頂上に埴輪であらわされた首長の死後の住まいは、外側を四角く囲う盾形埴輪、靫形埴輪で外界から守られ、さらに2羽の鶏形埴輪によっても守られている様子をあらわしているのです。
ところで、鶏形埴輪には、雄と雌がいるとお話ししました。これは、鶏冠(とさか)やあご下の肉髯(にくぜん)の形でどちらか分かり、埴輪でもそのような表現がされています。皆さん、ジオラマをご覧いただき、どちらが雌でどちらが雄か、お分かりいただけるでしょうか。
(文化財保護課 新開 義夫)