くらし 【特集】協働・共創で思いを形に 宝塚大会議のすすめ(1)

令和6(2024)年は市制70周年を記念し、企業・大学などと連携したイベントが多く開催されました。その背景には、市が包括連携協定(※)を締結する企業・大学が、産学官の枠組みを超えてまちのことを考える「宝塚大会議」の存在がありました。今号では、大会議立ち上げの経緯やまちへの思い、大会議から生まれたプロジェクトなどについて紹介します。
※企業・大学などと市がそれぞれのノウハウを生かして、地域課題を解決し、持続可能なまちづくりをするための協定

■お話を伺ったのは大会議立ち上げに協力してくださったこのお二人
○吉田 玲子さん
エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社
経営企画室
サステナビリティ推進部
CSR推進担当部長

○西田 哲也さん
エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社
経営企画室
サステナビリティ推進部長

◇「宝塚市を良くしたい」という思いからスタート
西田:令和4(2022)年に包括連携協定を締結し、市とエイチ・ツー・オーリテイリングでまちのことを考える勉強会をしたいと考えていたところ、市担当者から「市制70周年を迎えるにあたり、包括連携協定の締結先みんなで力を合わせて、まちのために新たな試みをしたい」と提案されたことがきっかけで、「宝塚大会議」を開催することになりました。

吉田:大会議は全4回開催し、第1回は20の企業・大学などが「環境」「健康・福祉」「観光・産業・文化」のグループに分かれて、「市内でやってみたい取り組み」をテーマにアイデアを出し合いました。

西田:市外に拠点を構える企業・大学が多かったので、出たアイデアはいわば机上の空論でした。まちの観光資源などを知ったうえで、具体的に何ができるかを議論するため、第2回では宝塚駅周辺など中心市街地の「まち歩き」を行いました。市担当者がまちを案内しながら「この場所をもっと活用したい」という思いを伝えたことで「ここならこういった企画を実現できるのでは」と建設的な議論に発展していきました。

吉田:第3回では令和6(2024)年に取り組む具体的な内容を、第1・2回で出たアイデアを踏まえて検討しました。準備期間や予算規模など現実的な課題も想定しながら、それぞれの知識を生かしてブラッシュアップした案を第4回でグループごとに発表しました。宝塚の新たなブランド化を目指す案や、食生活改善講座、ヨガレッスンなどを通じて、子どもから高齢者までいきいきと輝き、まちの活性化を目指す案などが発表されました。

[大会議の流れ]
第1回:5月 アイデア出し
第2回:7月 まち歩き
第3回:9月 取り組み案検討
第4回:10月 取り組み案発表
実現:11月~各取り組み開始

◇令和5(2023)年の大会議を終えて
西田:全4回のプログラムは開催前に市と何度も調整を行いました。最初は市の部署間で意見の食い違いがありましたが、「まちを良くしたい」という思いで集まった職員が議論を重ねるごとに一枚岩になっていくのをひしひしと感じました。市職員にめっちゃ熱い人たちがいるのが衝撃でした。

吉田:企業でもスローガンだけ掲げて実施しないことはよくある話です。企業・大学同士が集まって仲良くなっただけで終わらせたくありませんでした。私たちも市と同じ熱量で議論を重ねたからこそ、それぞれのリソースやアイデアを市が利用するのではなく、対等な立場で取り組みを実現することができたと思います。

◇産学官「連携」ではなく産学官「混在」
西田:将来的には、大会議が誰が始めたか分からないほど地域に根付いたものになればうれしいです。地域で長く続くイベントには特定の主体が見えにくいものが多いですが、それこそがみんなの取り組みになり、継続していく鍵だと考えています。市や企業・大学といった枠組みを超えた「ごちゃまぜ」の状態こそ、まちのための新たな価値を生み出し、持続可能な仕組みを作る土台になります。市や企業などが互いに補完し合いながら、地域の発展に貢献していきたいです。

■大会議から生まれたプロジェクト
◇KIDSフェス
子どもたちが楽しみながらさまざまな体験をし、新たな学びや気付きにつなげることを目的に、ミニ四駆レース(ネッツトヨタ神戸(株))や宅配お仕事体験(コープこうべ)、AED講座(ALSOK)、野菜摂取量を測定するベジチェック(明治安田)などのブースを出展。また、雲雀丘学園高等学校の生徒もボランティアとして参加しました。

・フレイル調査のブースを出展し、呼び込みが大変でしたが、子どもとも関われて楽しかったです!
雲雀丘学園
高等学校
冨田 真央さん

・家族連れが多く、世代を超えた交流ができました
雲雀丘学園
高等学校
酒井 菜々美さん

◇エコ×エネフェス
環境に関心を持ってもらうため、フードロス削減を学ぶてまえどり体験((株)セブン-イレブン・ジャパン)や、ガス用ポリエチレン管を利用した万華鏡づくり(大阪ガスネットワーク(株))などを実施。市民団体による子育て応援イベント「こもたのカーニバル」と同日開催することで、千人以上の親子が環境について学ぶことができました。

・エコ×エネフェスとのコラボで、企業の特色を生かしたコーナーが体験ができ、子どもも大人も企業の取り組みを楽しく学べるよい機会になりました
こもたの推進委員会
桝井ひとみさん

◇宝交早生苺(ほうこうわせいちご)プロジェクト
生ごみを堆肥に変えて土を作り、宝塚で生まれたイチゴの品種「宝交早生」を栽培する資源循環プロジェクト。光明小学校3年生を対象に、宝交早生に関する講座や堆肥を使ったイチゴの苗植え(甲子園大学)、人間の暮らしとミツバチのつながりに関する授業((特非)銀座ミツバチプロジェクト)などを行いました。

・自分でイチゴを育てる時に役立つといいな
・甲子園大学の先生やお姉さんがイチゴの植え方を優しく教えてくれた!
光明小学校3年生の皆さん