くらし [特集]知ればもっと食べたくなる佐用の肉がおいしい7つの秘密(1)

佐用には、肉が愛されてきた理由があります。それは味だけでは語れない、この町ならではの〝文化〟です。
山あいの暮らしでは、牛が家族のように寄り添い、季節の行事や祝いの席には、いつも肉料理が並びました。精肉店の軒先で交わされる会話や、ホルモン焼きうどんの香りも、この町の記憶をつくってきました。
そうした日々の積み重ねが、「肉を味わうこと」を佐用の暮らしに根づかせたのでしょう。
7つの秘密をたどれば、肉が愛されてきた理由と、〝好き〟が育ってきた歩みが見えてきます。

◆1 佐用の肉文化の原点
古くから牛は農家の宝として、人々の暮らしを支えてきました。田を耕し、荷を運ぶ。牛はまさに家族の一員のような存在でした。
明治になると、牛肉が食卓にあがるようになり、佐用でも牛との関わりが新しい形へと変わっていきます。明治39年、県の認可を受けて公設のセリ市場が現在の佐用大橋近くに開設されました。これをきっかけに郡内の農家では和牛飼育への熱意が高まり、畜産も進展。佐用は次第に県内でも有数の牛の産地として知られるようになっていきます。
昭和12年ごろには戦争の影響で子牛の価格が急騰し、牛を飼う農家が増加。年4回開かれるセリ市場では、1回で700頭以上が取引されるほどの活気を見せました。特に佐用の牛は「早く大きく育つ」と評判で、県外からも人気を集め、「佐用牛」の名が広く知られるようになりました。
時代の流れとともに牛を飼う農家は減りましたが、牛とともに生きてきた人々の知恵や技術、そして佐用で育まれた牛への思いは、今日の肉文化へと受け継がれています。


昭和26年10月末時点の佐用郡内の畜牛の飼育頭数。現存する最も古い記録です。
(出典:佐用町史 別巻)

◇町内最高齢に聞きました 肉が特別だった時代の記憶
「お肉は昔も今もごちそうやな」
服部 勇さん(105歳)=廣川=
「昔はな、農耕用の牛に子どもを産ませて、佐用のセリ市場に出しとったんよ」と、懐かしそうに話すのは、町内最高齢の服部勇さん。
当時は周囲の家のほとんどが農家で、牛や鶏を飼うのが当たり前の時代でした。「それでもな、食卓に肉が並ぶのは、お盆と正月、それにお祭りのときくらいやったわ。それも鶏肉やで」と振り返ります。
猟をしていた服部さんは、たまに猪肉を口にすることもあったそうですが、「肉をよう食べるようになったのは、50年ほど前からになるかな」と続けます。「今は親族が集まって焼肉を囲むのが、何よりの楽しみなんや」と、目じりにしわを寄せました。

◆2 佐用で育てる神戸ビーフ
佐用で育つ神戸ビーフには、見えない努力があります。血統を選び、環境を整え、日々の変化を丁寧に観察する――。盛本牧場の“3K”が、その確かな品質を支えています。
盛本牧場 盛本和喜(かずき)さん=上町=

古い木造の牛舎。歴史ある梁や柱とは対照的に、床は清潔で匂いもなく、牛たちが穏やかに過ごせる空間。そんな「盛本牧場」を営むのは、兵庫県が世界に誇る神戸ビーフを育てる盛本和喜さん。
大学卒業後、父が営む「盛本精肉店」で働きながら和牛の肥育をしていましたが、「肥育だけでは自信をもって牛を提供できない」と一念発起し、繁殖から肥育まで一貫して手がける道を選びました。
しかし、意気込んだ矢先に襲ったのが平成21年の水害でした。精肉店は冷蔵庫まで浸水し、幾晩も悩んだ末に閉店を決断。本格的に神戸ビーフの生産へと舵を切ります。
盛本牧場は現在、県内で唯一、人工授精から肥育までを一貫して行う牧場です。「当初は不安で仕方がなかった」と振り返る盛本さんですが、「牛にストレスをためないよう、『血統』『環境』『管理観察』の3Kにこだわってきた」と肥育の秘けつを語ります。その日々の積み重ねの先にあるのが、牛の出荷の瞬間。「お肉を食べた人が笑顔になれば」との思いで、休みなく手塩にかけて育てた牛を送り出します。
地道な努力は実を結び、育てた牛は品評会でたびたび受賞。その評判は国内外の有名飲食店やホテルにも広がりました。それでも、「評価されるのはうれしいが、何より歴史ある佐用の肉牛文化をつなげてこられたことが誇らしい」と穏やかに話します。

・佐用から世界へ
佐用産の神戸ビーフが世界中で愛される日をめざして、盛本さんの挑戦は続きます。

○盛本さんの神戸ビーフが味わえる レストランKUMOTSUKI
平福の旧木村酒造を改装した「レストランKUMOTSUKI」。趣ある空間で洗練された地元の味を楽しめます。町内で唯一盛本牧場の神戸ビーフを提供しています。
ステーキやビーフシチューをご用意しています。プチ贅沢で、神戸ビーフのおいしさを味わってみませんか?
住所:佐用町平福475-1
営業時間:11:00~14:00/17:00~20:00(LO)
定休日:(水)
※ディナーは予約のみ
電話番号:【電話】71-0700