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- 自治体名 : 兵庫県佐用町
- 広報紙名 : 広報さよう 令和7年4月号
町は、荒廃した森林を再生する取り組みの一環として、短期間で生育する早生樹を活用した新たな林業システム「短たんばつきせぎょう伐期施業」の研究を進めています。令和5年度からは試験植栽を行い、佐用町の気候に適したユーカリの品種がだんだんとわかってきました。
◆森林の役割と現状
佐用町は、町の面積の約8割を広大な森林が占めています。森林は、水を蓄える、土砂災害を防ぐ、温室効果ガスを吸収するなど、私たちの暮らしに欠かせない大切な役割を果たしています。
しかし、高度経済成長期以降、生活様式や建築様式の変化により国産木材の需要が減少しました。さらに、人口減少や高齢化の影響で林業の後継者不足が深刻化し、森林の管理が行き届かず放置されるケースが増えています。その結果、荒廃が進み、森林が本来持つ多面的な機能を十分に発揮できなくなっています。
◆森林を守るための「町有林化」への取り組み
こうした状況を改善するため、町は令和4年度から、個人では管理が難しくなった森林の「町有林化」を促進しています。町はこのような森林を引き取り、将来にわたって効率的な管理に努めていきます。
これまでに650人から申請があり、町内の森林面積の約6%にあたる約1400ヘクタールが寄付または買い取りにより町有林となりました。開始から3年が経過しましたが、今も多くの相談が寄せられており、当面はこの事業を継続していきます。
◆森林再生と雇用創出をめざして
町は、町有林化と並行して、早生樹を活用した新しい林業「短伐期施業」を模索しています。これは、成長の早い樹種を短期間で収穫・活用する林業モデルを確立することで、放置林の増加を防ぐとともに、林業の担い手の育成や雇用創出につなげることを目的としています。
令和5年度からは、東京農工大学および(株)ジャパンインベストメントアドバイザーと協定を結び、世界各地で広く植栽されているユーカリが森林再生に活用できるかどうかの実証実験を共同で進めています。
◆実証実験の成果が見えてきました
植栽実験では、数百種類あるユーカリの中から、佐用町の気候や環境に適した14品種を選定し、試験的に植栽しています。これまでに多くの苗木を植栽しましたが、鹿などによる食害の被害を多く受けました。しかし、一部の品種は順調に成長し、2年間で約4mまで成長するものも確認され、今では数種類にまで絞り込まれています。
また、利神小学校跡地では、グラウンドの一部にビニールハウスを設置し、ユーカリの苗木を育てています。さらに、旧校舎内では、挿し木によるエリートツリーの繁殖試験を実施しています。
◆町は挑戦し続けます
今後は、品種の選定と併せて、気候や土質などの条件や環境に対する影響などを確認するため、植栽地を拡大し、観察を続けていきます。
森林を守りながら、新たな林業の可能性を広げ、持続可能な森林をつくる。私たちは、この取り組みが森林の再生だけでなく、安心安全なまちづくりや地域の活性化につながると信じ、これからも挑戦を続けていきます。
◆試験植栽の状況
◇佐用地内の植栽実験
開始時期:令和5年5月~
面積:1.3ヘクタール
植栽本数:14種3,400本
鹿などの食害の被害を受けたもの、暑さ寒さに強いものなどの適性が確認できています。
◇皆田地内の植栽実験
開始時期:令和6年10月~
面積:0.2ヘクタール
植栽本数:3種600本
急傾斜地での実験を行っていますが、鹿などの食害の被害を受けました。
◇利神小学校跡地での育苗
開始時期:令和6年6月~
育苗状況:5種46,000本
次の植栽実験で使用する苗を生育しています。令和7年度から露地での栽培を行います。
◆ユーカリが切り拓く地方再生の道
・東京農工大学 農学研究院 浅田隆之 特任教授
1990年頃まで盛んだった林業は、外国から安価な木材が輸入されるようになったことで衰退していきました。私は、この流れが地方の過疎化を招いた一因だと考えています。だからこそ、「山で働く」という地方の原点に立ち返ることが重要だと感じています。
長年ユーカリを研究してきましたが、山の再生を考えたときに行き着いたのが、このユーカリという樹木でした。ユーカリのような早生樹は、約10年で伐採が可能なため、短いサイクルで林業を回すことができ、担い手の育成や雇用の創出につながります。また、成長が早い分、二酸化炭素の吸収量も多く、脱炭素社会の実現にも貢献できます。さらに、加工のしやすさや多用途性にも優れており、新たな木材資源としての可能性も広がっています。
佐用町での実証実験は、森林資源に恵まれた日本の地方全体の再生につながる、壮大な社会実験だと考えています。この取り組みが、地方の未来を切り拓く一歩になればと願っています。
問い合わせ:農林振興課
【電話】82-0667