文化 いにしえの風特別編 藤ノ木古墳発掘調査から40周年

1400年前のタイムカプセルを見に行こう

今年は、昭和60(1985)年に藤ノ木古墳(ふじのきこふん)の第1次発掘調査が行われてから40年の節目の年です。藤ノ木古墳は現在まで6回にわたり発掘調査が行われています。
今回は、藤ノ木古墳のこれまでの調査の歴史と、40周年の記念イベントについてお知らせします。

■藤ノ木古墳発掘調査の歴史
◇第1次調査(昭和60(1985)年)
巨大な横穴式石室を確認
周辺の開発にそなえてはじめられた古墳の基礎的なデータを収集するための調査で、大型の横穴式石室(よこあなしきせきしつ)が見つかりました。石室の奥には、朱(しゅ)が塗られた家形石棺(いえがたせっかん)が安置されていて、石棺と石室の奥壁(おくへき)との80cmのわずかな空間から、金銅製(こんどうせい)の馬具(ばぐ)が発見されました。なかでも鞍金具(くらかなぐ)は、世界でも類例のない装飾性豊かなもので、藤ノ木古墳の名は一躍有名となりました。

◇第2次調査(昭和63(1988)年)
ファイバースコープ調査
石棺内の調査を行うかどうかの判断をするため、ファイバースコープ(内視鏡(ないしきょう))による調査が行われました。石棺内には水がたまっていて、ところ狭しと遺物(いぶつ)が詰まった状態が確認され、石棺内が未盗掘(みとうくつ)であることが明らかとなりました。たまった水を分析したところ、水に金属成分が溶け出していることがわかり、このままでは、金属製の遺物が消滅する恐れがあることから、開棺(かいかん)調査が行われることになりました。

◇第3次調査(昭和63(1988)年)
石棺内の調査
石棺内部はあざやかな朱が塗られ、2人の被葬者(ひそうしゃ)が頭を東に向けた状態で埋葬されていました。その周囲には、金銅製の冠(かんむり)や履(くつ)、大刀(たち)や剣(けん)などの武器、銅鏡(どうきょう)などがあり、頭部付近には、金銅製のさまざまな形をした玉類(たまるい)や勾玉(まがたま)、一万五千点にもおよぶガラス製の玉類などの装身具(そうしんぐ)(アクセサリー)など、おびただしい遺物が埋葬(まいそう)当時の状態を保っていました。これだけの立派な家形石棺が盗掘をうけることがなく残っていたことは大変めずらしいことで、当時の権力者の古墳の副葬品(ふくそうひん)を考えるうえでも、非常に重要な調査となりました。

◇第4次調査(平成12(2000)年)
石室の羨道(せんどう)(通路)を封鎖していた閉塞石(へいそくせき)(石積み)の調査が行われました。閉塞石の石材に積みなおした痕跡(こんせき)が見つからなかったため、埋葬は一度限りであったことが明らかとなりました。

◇第5次調査(平成15(2003)年)
墳形(ふんけい)や墳丘(ふんきゅう)の規模、また、かつて古墳の南側に存在した「宝積寺跡(ほうしゃくじ)」の調査が行われ、直径が50m以上ある円墳ということがわかりました。また、中世頃の宝積寺と考えられる建物が墳丘の南側に接して建っていたことがわかりました。

◇第6次調査(平成16(2004)年)
墳丘の南西部の状況を確認するための調査が行われ、焼土(しょうど)や焼けた壁土(かべつち)、瓦(かわら)などが出土し、江戸時代末頃に宝積寺が焼失した記事を裏付ける結果となりました。

■Pick Up! 40周年記念ポスター・ロゴマーク
ポスター右上のロゴは、発掘調査で出土した遺物をデザイン化したものです。また、40の「0(ゼロ)」をよく見ると、右下に黒い切り込みが…。実は、「0」は、藤ノ木古墳の北を上に真上から見た状態を表現していて、切り込み部分は石室の入口部分にあたります。
※詳細は本紙をご覧下さい。

■藤ノ木古墳発掘調査40周年記念プロジェクトスタート!
◇9/16~17 大阪・関西万博でのPR
大阪・関西万博のパビリオン(「Dialogue Theater-いのちのあかし-」森の集会所内)でワークショップや動画などをもちいて、藤ノ木古墳や斑鳩町の文化財をPRします。ぜひ、お越しください。

◇9/25 藤ノ木古墳ウォークイベント
藤ノ木古墳の日(9月25日(木))にあわせて、ウォークイベントが開催されます。歩いて古代のロマンを感じてみませんか。
主催:近畿日本鉄道株式会社
共催:歴史街道推進協議会

◇11/15~16 斑鳩遊学プロジェクト
藤ノ木古墳に見立てたカレーをつくりながら、藤ノ木古墳のことを楽しく“深掘り”します。
ぜひ、ファミリーでご参加ください。
主催:法隆寺iセンター

◇11/22 40周年記念シンポジウム
いかるがホールで記念シンポジウムを開催します。専門家をまねき、斑鳩の歴史や藤ノ木古墳について熱く語っていただきます。
被葬者は一体誰なのでしょうか?

◇10/4、12 11/12、24 文化財技師と行く!いざいざ奈良特別ツアー
現在、JR東海が実施している「『いざいざ奈良』法隆寺(ほうりゅうじ)編」とのコラボ企画として、普段は見学することができない藤ノ木古墳の石室や法隆寺若草伽藍跡(わかくさがらんあと)を見学できるツアーを行います。
特別感満載のツアーに、ぜひご参加ください。
※ツアーに関する詳細は、JR東海「いざいざ奈良」サイトをご確認ください。

問合せ:地域振興課(斑鳩文化財センター内)
【電話】0745-70-1200