- 発行日 :
- 自治体名 : 鳥取県智頭町
- 広報紙名 : 広報ちづ 2025年10月号
■成人の8人に1人?CKD(慢性腎臓病)とは
内科医師 岡本尚
CKD(慢性腎臓病)は、近年よく耳にする単語だと思います。腎臓は体の中に二つあり、大きさは約8~10cmで、握り拳大ほど。血液をろ過して、老廃物を尿として排出し、体内の水分や塩分のバランスを保つ大切な臓器です。ただし、障害が進行しても自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに重症化してしまうことが少なくありません。その代表がCKDです。日本では成人の約8人に1人と言われています。これは日本人のおおよそ1300万人に相当し、糖尿病や高血圧と並ぶ「国民病」とも呼ばれています。
ここで腎臓の主な働きについて、紹介します。
▽腎臓の役割3つ
(1)老廃物の排泄
体内で生じた不要物や毒素を尿にして排出します。
(2)体液バランスの調整
水分、ミネラル(ナトリウムやカリウムなど)を調整し、血圧や体内環境を一定に保ちます。
(3)ホルモン産生
赤血球を作るエリスロポエチンや、骨の健康に関わるビタミンD活性化を担います。
▽CKD(慢性腎臓病)とは
CKDとは「3か月以上にわたり腎機能が低下した状態」を指します。腎臓のろ過機能を示すeGFR(簡単に言うと、腎臓の点数)という指標が60未満に下がる、あるいは蛋白尿が持続する場合に診断されます。
糖尿病や高血圧、動脈硬化などが原因で発症することが多く、初期はほとんど自覚症状がないため、検診での尿検査や血液検査で初めて異常が分かることが多いです。進行すると、むくみ、貧血、だるさなどが出現し、さらに進むと透析治療が必要となります。腎機能は一度低下すると回復が難しいため、早期発見・対策がとても大切です。
▽検査と予防
外来で行う尿検査(蛋白尿、血尿の有無)や血液検査(クレアチニン値、eGFR)が基本です。腹部エコー検査で腎臓の形を確認することもあります。進行予防のためには、次のような対策があります。
・塩分を控える(1日6g未満を目安に)
・規則正しい生活と適度な運動
・糖尿病や高血圧の管理
・喫煙、過度の飲酒を避ける
CKDは気づかぬうちに進行し、生活の質を大きく損なう可能性があります。しかし、定期的な検査と生活習慣の改善で予防や進行抑制が可能です。「自分は大丈夫」と思わず、健康診断を活用して早期に異常を見つけることが、腎臓を守る第一歩です。
