くらし [特集]今、そしてこれからの地域医療を考える(1)

今、江津の地域医療は多くの課題を抱えています。人口減少、少子化が進んでいく中、地域医療を維持していくために必要なことは何なのか。
今回の特集では、令和7年4月に済生会島根県支部の支部長に就任された木村清志先生と、江津市医師会会長の花田有二先生、そして中村中市長の3人に、現状を踏まえた各医療機関の役割と今後の地域医療について、ざっくばらんにお話しいただきました。

■現状と課題
中村市長(以下「市長」):江津の地域医療に関しては医療介護人材不足、人口減少、そして患者の高齢化、多くの課題があります。病院や診療所の現状と課題、改善に向けて今現在取り組まれていることをお聞かせください。
木村清志支部長(以下「支部長」):以前は、医師の確保が大学の医局からの派遣で円滑に行われていました。しかし、医局員が減少したり、専門分化が進むことで、例えば、従来の消化器内科が肝臓と胃腸に細分化されるなど、それぞれに特化した専門医が増え、全体を診る医師の数が減少しています。また、自治医科大学の医師はへき地が優先となるため、江津市への派遣は難しいです。
私も高齢の総合診療医ですが、今年度、若手総合診療医が中心となりチームで取り組む体制を作ったところ、少し良い形になりかけています。今後どうやって総合診療医を増やしていくのか、どう病院の魅力を高めていくのか、総合診療医を派遣するところが少ない中で課題はたくさんあります。
また、専門医が全くいなくていいわけではない。どの科の専門医が必要なのかはぜひ市民の声を聞き、市から財政支援もいただきながら良い形で必要な専門診療の部分も確保していきたい。
花田有二医師会長(以下「医師会長」):医師会の開業医も高齢化、それから閉院などもあり会員不足というのが現状です。地域医療を担っている医師会の会員が減ると、普通の慢性疾患などを診るのも手が回らなくなる可能性があると思いますし、学校医や産業医などを維持するのに、1人の先生に2ヶ所持ってもらうなど、分配も大変になってきています。そういうことがあるので、新規開業や後継者に帰ってきて欲しいと思っていますが、江津市の現在の状況では難しいことかなと思います。
診療報酬がほぼ、上がらない状況がここ10年、20年続いています。物価が上がってない時期だと施設や設備投資に関してもそれなりに維持できていましたが、コロナ前後頃から厳しい状態になってきています。新規開業を進めるのが難しい状況です。後継者も、帰ってくるのに二の足を踏む状況だと思います。後継者がいても、都市部の病院にそのまま留まって帰ってこない。魅力を感じられなくなってきているような状態があると思います。それが今の医師会の状況で、医師会員が減り地域の医療を支えるのが難しくなって来ている状況です。
支部長:済生会としては、医師会の先生方がカバーしきれなくなってくる地域を、病院としてお手伝いしていけるようなマンパワーも揃えていく必要があります。それが済生会の魅力にもなっていくと思っています。
市長:済生会と開業の先生方の連携を今まで以上に密にしていくという必要がありますね。医療連携法人江津メディカルネットワークは今どういう状態にありますか。
医師会長:メディカルネットワークは、開業医と済生会医師の人材の交流や、開業準備しながら済生会で診療にあたるなどを理念としています。実際にこの数年間にあったかというと、あまり進んでないような状態ですね。

■「行政」に何を求めるか
市長:行政がどう関係し、どう間を繋いでいけば、上手く機能するかということも含めて、考えていく必要があると思います。
それぞれの役割を今後どのような医療体制を目指していくべきか、また行政にできることは何かお聞かせください。
支部長:診療報酬制度は国が決めたもので、保険点数のことですが、上がらないんです。物価等の高騰についていっていません。結果それで、後継者がおられても、帰るのをやめようとなったり、都市部の病院に留まることになっています。
仮に医療費を上げるとすれば、今度は患者さんの費用負担が大きくなります。患者さんが困るし、そのために病院へ行くのを延期されかねない。行政が色々な形で財政支援をすることが必要だと思います。
医師会長:開業医は独立採算で、仮に新規開業した場合には建物代全部を借金し、診療報酬をもらいながら返済していくというのが基本ですが、その余裕がなくなっています。継承するにしても新しく投資が必要です。他の業種でも継承などに対しての補助など出ているので、医療の分野でも必要ではないかと思います。
市長:地域医療を守っていくというのは、当然行政も一緒になりできることは取り組む必要があると考えています。今後も色々なお話を聞きながら支援していきたいと思っています。

■救急医療について
市長:次に、市民の意見の中では、救急医療について関心が高いです。市内の救急患者は、市内にある2次救急医療機関である済生会に運ばれると思いますが、今現在どういった状況なのか教えてください。
支部長:最近の済生会は救急患者の受け入れが非常に良くなっています。多発外傷でそのまま転院ということも起こることがありますが、救急隊もまずは済生会へ搬送し、済生会も断らない救急を目指しています。
結果的に転送する場合は、医師の同乗が必要で、当直医以外にもう1人医師が必要となります。今後は、済生会でそのまま診れる患者さんを増やすため、専門医も入ってもらう努力もしていきます。しかし、全部というわけにはいかない。どこまでかに関しては、やはり市民の意見も聞きながら、不採算のところは市にもご支援いただきながら、やっていこうと思っています。
昨年度導入したJoin(※1)は非常に活躍しています。やはり画像が直接専門医に送られていくのは判断がしやすい。
市長:Joinに関しては、救急搬送時の判断のスピードを上げる一助になればということで導入をしたところでございますので、ぜひ活用いただければと思います。