健康 雲南病院だより

■前立腺肥大症に対する低侵襲(ていしんしゅう)治療(WAVE(ウェーブ)治療)という新たな選択肢
泌尿器科 医長 杉谷智之(すぎたにともゆき)

令和6年12月よりWAVE治療を当院で導入しましたので、紹介します。

■まず前立腺肥大症ってなに??
男性の加齢とともに発症する病気で、前立腺が徐々に大きくなり、尿道を圧迫することで排尿に関するさまざまな障がいを引き起こします。代表的な症状には、尿の勢いが弱くなる、尿が出にくい、途中で途切れる、頻尿(特に夜間の排尿)、強い尿意が突然起こる、残尿感などがあり、これらは生活の質(QOL)を著しく低下させます。

■受診した方が良いのか??
気になる方は以下の質問票をご使用ください。国際前立腺症状スコアとは前立腺肥大症などの排尿に関する症状の重さを、患者さん自身が点数で評価する質問票です。7つの症状(排尿の勢い、尿の切れ、頻尿など)について答え、合計点で症状の程度(軽度:7点以下、中等度:8点から19点まで、重度:20点から35点まで)を判断します。
中等度以上の方は治療が必要な前立腺肥大症があるかもしれませんので、病院を受診することをお勧めします。

■治療方法って??
大きく分けて3つあり、まずは生活習慣の改善や薬物療法を試みます。薬物療法では、前立腺や膀胱の筋肉を緩める「α遮断薬」や、前立腺の縮小を促す「5α還元酵素阻害薬」などが用いられます。薬で十分な効果が得られない場合や症状が重い場合は、外科的治療が検討されます。従来の標準的手術にはTURP(ティーユーアールピー)(経尿道的前立腺切除術)やHoLEP(ホーレップ)(ホルミウムレーザー核出術)がありますが、令和4年に保険適応となった身体への負担が比較的少ない手術がWAVE治療です。

■WAVE治療って??
図に示すように麻酔後(脊椎麻酔、全身麻酔)に尿道からデリバリーデバイスを挿入し、針を前立腺に刺し、水蒸気を注入して内部の組織を壊し、時間をかけて縮小させる治療法で、手術時間が10分程度と短く(従来の手術では1時間から3時間)、血尿、感染、性機能障がいなどの合併症のリスクも低いのが特徴です。合併症のリスクが高い患者さんや高齢、認知機能障がいなど、術後の身体機能低下リスクが高い患者さんでも受けることができます。当院でも令和6年12月より導入し、手術を実施しています。当院では2泊3日で退院することができます。術後尿道がむくむことで排尿障がいが一時的に出るため、尿道カテーテルは5~7日ほど留置し、外来で抜去します。もともとカテーテルが入っている患者さんは治療効果が出る1ヵ月後に抜去を予定します。おしっこの症状というのはなかなか人に言いづらいことですが、治療することで、睡眠の質の改善、心身ともに日々がより充実したものになると考えます。今まで手術に踏み切ることができなかった方の新たな治療選択肢となればと思います。ご相談お待ちしています。
※図は広報紙9ページをご覧ください。