- 発行日 :
- 自治体名 : 山口県岩国市
- 広報紙名 : 広報いわくに 令和7年2月15日号
■江戸時代に描かれた白い蛇
今年の干支である巳(み)は、動物では蛇にあたります。岩国市には国の天然記念物である「岩国のシロヘビ」が生息しており、岩国シロヘビの館などで、その姿を見ることができます。
「岩国のシロヘビ」は、アオダイショウという褐色の蛇が白化したアルビノの個体で、遺伝的にかなり珍しいものです。江戸時代の岩国でも白化した蛇は存在しており、元文3(1738)年に横山・千石原(せんごくばら)にあった門の付近で見つかっているほか、今津の米蔵など城下町を中心に目撃情報が残っています。
また蛇は、水や芸能をつかさどる神である弁財天の使いとして知られており、蛇自体も水の神・蛇神として祭られるなど、神性を持つ生き物と考えられています。江戸時代の岩国のいくつかの村では、梅雨の時期にのみ現れる蛇がいたともあり、人々はこういった蛇を「梅雨左衛門(つゆざえもん)」と呼び、風雨を招く存在と認識していたようです。「梅雨左衛門」の中には、全身が白い個体もいたことも書き記されています。
このように、白い蛇に関する記録はいくつか見られますが、その様子を絵で表現したものは、当館所蔵資料の中にはありませんでした。通常の蛇に関しては、江戸時代に全国的に流通した百科事典「訓蒙図彙(きんもうずい)」の中にリアルな姿が描かれていますが、体の色は黄や赤、緑とされています。
そのような中、生き物に関する企画展の開催にあたり、白い蛇を描いた江戸時代の掛軸を借りることができました。掛軸には、花が咲く草むらの中で、黒い蛇と向かいあう白い蛇が描かれています。この絵は、江戸時代後期の岩国の武士である和田石英(わだせきえい)が描いたものですが、白い蛇については、石英が実際に見て描いたのか、白い蛇の存在を聞いて想像して描いたのか、経緯は不明です。しかし江戸時代の岩国に生きた人が、自然になじんだ白い蛇の姿を描いていることは「岩国のシロヘビ」の歴史を考える上で、興味深いことです。
この絵は、現在開催中の企画展で展示していますので、ぜひご覧ください。
※3月2日(日)まで企画展「いきものばかり2025」を開催しています。
▽岩国徴古館(いわくにちょうこかん)
昭和20年に旧岩国藩主吉川家によって建てられ、その後岩国市に移管された市立の博物館
住所:横山二丁目7-19
【電話】41-0452
休館日:月曜(祝日の場合はその翌日)