くらし 〔特集〕Special Feature 農家の若造が拓く遊休農地の未来(3)

■つないでくれて、ありがとう――生き返った畑は誰かの夢であり、喜び
遊休農地再生プロジェクトは、農地を貸したい人と必要とする人をつなぐ役割りもしています。農地を貸した人、借りた人たちに話を聞くと、この活動のありがたさが伝わってきます。

◆ここから歩み出す夢の農家への道――
大木積(あつむ)さん(58)[谷]
「田舎で農業をしたい」という夢をかなえるため、サラリーマンを辞めて内子町へ引っ越してきました。新規就農者研修滞在施設に空きがあり、50代の私でも受け入れてくれたことが移住の決め手です。経験も、農地も、知人もない、ゼロから挑戦する私を、たくさんの人が支えてくれました。農家の若造の皆さんにも支えられ、メンバーの一人・三浦裕太郎(ゆうたろう)さんのもとで野菜作りを学びながら、少しずつ技術を習得しました。
一番苦労したのは農地探しです。農地を見つけても、地主さんに断られることが多く、思い入れのある土地を借りるには信頼関係がないと難しいです。現地へ行くと草木で荒れていて、自力では開拓できないと諦めたことも――。だからこそ、皆さんがつないでくれた農地のありがたさを感じます。農業をしたいと思い続けてきたから、この農地は私にとっては夢舞台。皆さんにスタートラインに立たせてもらった気持ちです。体力が持つのか、生計が立つのか、不安もあるけれど、ここから頑張りたいです。
三浦さんは今でも相談に乗ってくれていて、心強いです。私はずっとこのまちで、畑を耕しながら生きていきたい。農業でも地域でもしっかりと根を張れるよう、一歩ずつ前に進みたいです。まずは「おいしいから食べて」と胸を張って言える野菜を作るのが目標です。

○大木さんにつながった遊休農地が再生するまで
・畑の周りには雑木も生えていて一つ一つ、手作業でのけていく

・緑肥でまいた種がぐんぐん成長。夏にはきれいなヒマワリ畑に――

・畑を耕した後は畝(うね)を作り、みんなで協力してサツマイモを植えた

◆畑だけでなく心まで晴れやかに
福山勇(いさむ)さん(68)[大岡]
農家の若造の皆さんにきれいにしてもらったのは、広さ50アールほどの農地です。父が農地拡大のために購入した畑で、以前は地域の基幹産業だった葉タバコが栽培されていました。でも7年前に作り手がいなくなってからは、ずっと手つかずのままでした。代わりに農業をしようにも農地が広すぎて、高齢の私には耕すことはできません。草で覆われていく畑を見るのは心苦しく、せめて手の届く範囲くらいはと、妻と草引きをしていましたが、自然の力には勝てませんでした。
農家の若造の皆さんに「プロジェクトのために畑を貸してほしい」と声をかけてもらった時は迷わずお願いしました。中には顔見知りの子もいて安心して任せられました。作業は10人がかりで5日はかかったと思います。おかげで見違えるほどきれいになり、心まで晴れやかな気持ちになりました。いくら若くても、体にこたえたはず。感謝の気持ちでいっぱいです。
畑では今、三浦さんがジャガイモを育てています。子どもたちは町外で暮らしていて、畑を継ぐ予定はありません。でも、いつかは誰かがこの農地を継いでくれたらいいと思っていたから、使ってくれるのがとてもうれしいです。畑を見るのも楽しみになりました。

○福山さんが所有する遊休農地が再生するまで
・畑とは分からないほどカヤが生い茂り、前が全く見えない状態

・緑肥でまいたマリーゴールドの花が咲き、美しい景観が広がる

・トラクターできれいに耕し、ジャガイモ畑へと変化した農地

■お知らせ
○遊休農地の相談をお待ちしています
耕作できなくなった農地を、貸したり売ったりすることに関心はありませんか。手入れの行き届かなくなった農地は景観の悪化だけでなく、鳥獣被害の増加にもつながります。農地を必要とする人につなぎ、大切に使ってもらうことが地域の元気にもつながるかもしれません。情報だけでもいいので、農業委員会や農業委員、農地利用最適化推進委員までご相談ください。

問合せ:農業委員会
【電話】0893-44-2113