- 発行日 :
- 自治体名 : 愛媛県内子町
- 広報紙名 : 広報uchiko 2025年6月号
■「凧愛」を込めて、私たちも応援
五十崎凧博物館では職員の皆さんが初節句の祝い凧を作り、内子高校美術部ではけんか凧に絵を描いています。ここでは愛着を持って凧文化を伝承し、楽しみながら大凧合戦を応援する皆さんの姿を紹介します。
◇「揚がらん凧は、凧じゃないですらい――」受け継いだ凧への愛情
地元で凧名人と呼ばれていた奥島重利(しげとし)さん(故人)から受け継ぎ、初節句用の小さな祝い凧を作っています。小さいほど風を受ける面が狭くなり、揚げるのは難しいのですが、この祝い凧はちゃんと揚がるように設計されています。「揚がらん凧は凧じゃないですらい」というのが奥島さんの口癖。軽さを追求し、縦の竹ひご1本を割いて使うなど、細やかな工夫が凝らされています。赤ちゃん一人一人の名前を凧文字にしたのも奥島さんです。受け取った家族もうれしいですよね。この小さな凧には作り手の愛情がたくさん詰まっていました。私が同じように作れるか不安でしたが、凧博物館の職員として奥島さんの「凧愛」を受け継ごうと思いました。作り方は繊細で、竹ひごを貼る位置が数ミリでもずれると揚がりません。作業は大変ですが、祝い凧が家族のいい思い出になるよう、みんなで協力して制作しています。
凧博物館は五十崎の凧文化に触れられる場所です。ここから凧の魅力を発信し、これからも五十崎の凧合戦が続いていくよう、凧作りに携わる人たちが増えるとうれしいです。
●変わらぬ子への思い—―
4月13日に共生館で開かれた「出世凧」の名前書きには、町内外から130組の家族が参加しました。凧に初節句を迎えた子どもの名前を書き、空に揚げることで健やかな成長を願います。「緊張する」と言いながら子どもの名前を書くお母さんを、お父さんが笑顔で見守っていました。
◇「一筆一筆、心を込めて 一枚一枚、丁寧に――」ワンチームで描く凧
内子高校美術部では毎年、大凧合戦のスポンサーから依頼される凧絵を制作しています。凧師さんが作る白凧に、お願いされたデザイン画を描いています。今年は約4カ月かけて32統を作りました。
絵を描くときに心掛けているのは、空に揚がったときも、真近で見てもきれいに見えること。和紙はにじみやすいので、むらができないように筆で慎重に塗っています。文字などの細かい部分まで美しく仕上げられるよう、一筆一筆心を込めて、一生懸命に描いています。同部の良さは先輩も後輩も、みんなが仲がいいところです。春休みには、卒業した先輩たちが何人も手伝いに来てくれます。部員は4人と少ないので、とても助かりました。
合戦当日は、私たちが描いた凧が風に乗って大空を舞う姿に感激。みんなで時間をかけて制作した分、空に一秒でも長く揚がってほしいと願いながら眺めました。大凧合戦は小さい頃から大好きな祭り。卒業して内子を離れたとしても、また見に来たいし、私も後輩たちの凧絵作りを手伝いたいと思います。
●空を彩る色とりどりのスポンサー凧
内子高校美術部が手掛けるこの凧は「スポンサー凧」と呼ばれ、20年前から同部で絵を描いています。地元企業や団体のロゴマークを描くことが多いそう。西田さんは「自分たちが描いた凧が競り合っているのを見ると、つい応援に熱が入る」と話していました。