- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県宮若市
- 広報紙名 : 広報みやわか「宮若生活」 No.239 2025年12月号
◆〔SECTION4 ともに支える〕ここで出会い、ここで知り、ここで学び、ここでつながる
赤星 映子(あかほし えいこ)さん
言葉の壁を越えて人と人がつながる場所、みやわか日本語教室。その立ち上げを担った赤星さんは、なぜこの教室を始めたのか、そして彼女が大切にしてきた思いとは。日本語教室の誕生の背景と、そこから描く未来を見ていきます。
◇外国人と地域をつなぐ 日本語教室のはじまり
「私が日本語教室を始めようと思ったきっかけはいくつかあります。私は学習指導員をしているのですが、ある年、光陵小学校にパキスタンから一人の女の子が転入してきたんです。転入した当初は、日本語が全く分からない状態で、こちらもウルドゥー語(パキスタンの公用語)は分からず、英語で反応を確かめながらのスタートでした。でも、学校で生活するうちに、その子は少しずつ日本語を覚えて話せるようになったんです。
一方で、その子の親は日本語を学ぶ機会がありませんでした。そのことに気づいたとき、成人向けの学びの場も必要だな、と強く感じました。
ちょうどその頃、宮若でも外国人を見かけることが増え、学校でもさまざまな国籍の子どもたちを受け入れていました。そこで、大人も子どもも、みんなが学べる場所を作ろうと思い、日本語教室を立ち上げることにしたんです。
立ち上げにあたっては、会場の確保や補助金の活用など、行政とのやり取りも必要でした。参加者を集めるために、道行く外国人に声をかけたこともありましたね。市役所や企業の協力もあって、なんとか最初の参加者が集まり、日本語教室を開くことができました。
日本語を教える支援ボランティアは、知り合いや教員仲間などを誘うなど、とにかくいろんな人に声かけをしていましたね」。
◇言葉の壁を越えて 地域とつながる
「日本語教室では、一人ひとりのレベルやニーズに合わせ、日本語能力試験に向けた教材やひらがなカード、日常生活の動作を描いた絵カードなどを用いて、できるだけ丁寧に進めています。基本は一対一の学習ですが、ボランティアが複数人の学習者を担当する場合には、経験豊富な人が対応するなどの工夫をしています。
そして、日本語教室で私が一番大切にしているのは、『対等な関係』でいることなんです。上下の関係になってしまうと、どうしてもうまくいかないことが多いんですよね。学習者とボランティアが対等につながっていられると、お互い安心できるし、困ったことも『困った』と言いやすくなるんです。外国人の中には、いろいろな悩みを抱えている人もいますから、そうした話も安心してできる場所でありたいと思っています。教室を通して、学ぶ人も教える人も、互いに豊かになれたらいいなと思っています。
もちろん、最初は言葉が分からず緊張して表情が固くなる人も多いです。でも、『今日で二回目だね』『元気?』と声をかけるだけでも、ふっと笑顔になる。そんな小さなやり取りを重ねながら、言葉の壁を越えて人と人がつながっていくんです。中には、ボランティアと一緒に温泉や山登りに行く学習者もいて、ここからまた新しい関係が生まれているんだなと思うと、本当にうれしいですね。
日本語教室の中だけでとどまるのではなく、学習者とボランティア、そして地域の人たちのつながりも広げていきたいと考えています。異なる文化や価値観を持つ人同士が理解し合い、尊重し合える関係が生まれるといいなと思っています。教室で一緒に学ぶだけでなく、地域のイベントなどに参加することで、『自分の居場所はここにもある』と感じられるようになればうれしいですね。
毎月第二土曜日、第四日曜日に日本語教室を開催していますが、教室を訪れる人たちは本当に真面目で、休みの日なのにわざわざ来て勉強しているんです。ニュースやSNSで伝えられる外国人のイメージと、実際に教室で向かい合って話す印象は全然違うんですよ。『みんな一生懸命学んで、日本でよりよく生きたいと頑張ってるんだ』って、感じてもらえると思います。日本語教室の取り組みは、地域と外国人をつなぐ小さな一歩です。その一歩で、見える世界は少しずつ変わっていきます。
宮若には、『地域の人と仲良くしたいと思っているけど、関わる機会がない』そう思っている外国人もいるはずです。みなさんが一歩踏み出すことで、そういった人も支えられるようなまちになったらうれしいですね」。
◇赤星 映子(あかほし えいこ)
竹原地区在住。68歳。小学校教師を退職後、NPO法人育ちと学びの応援団を設立。放課後学習などの学習支援や不登校児の支援、日本語教室、こども食堂など多岐にわたる活動を行っている。好きな言葉は『楽しむ』。
◇暮らす・働く・学ぶ・支える みやわか日本語教室
日本語教室では、宮若に住む外国人を対象に、日本語指導や生活の困りごと支援などを行っています。地域や職場などで外国人と関わりのある人は、ぜひこの教室をご紹介ください。
また、日本語を教える支援ボランティアも募集しています。お気軽にご参加ください。
実施日:毎月第2土曜日、第4日曜日
実施時間:
・第2土曜日…午後1時30分から3時まで
・第4日曜日…午前10時から11時30分まで
場所:中央公民館 2階 学習室
問い合わせ:育ちと学びの応援団
【電話】090・7813・4727(赤星)
◇〔Interview〕みやわか日本語教室支援ボランティア 中村 真夕(なかむら まゆ)さん
私はSNSをよく見るので、最初は外国の人が怖いとかマイナスのイメージで、距離を保ちながら関わっていたような気がします。
ただ、何回か関わって行くうちに、日本語を教えるのは難しいな、色んな文化があるのはおもしろいなとか、一緒に学ぶことの楽しさに気づいてからは、自然と心の距離が近づいたと思います。
ボランティアとして参加する中で、一番印象に残っているのは、私と同じ21歳の女の子と出会ったことですね。故郷から離れた土地で日本語を勉強しながら働き、帰国後の夢まで持っていて、同じ年齢とは思えませんでした。そんな彼女の姿を見て、私も負けずに頑張ろうと思いました。
多文化共生って聞くとどこか遠いような気がしていましたが、日本語教室を通して、互いに文化を教え合うことや、言語について知ろうとすることが、多文化共生への一歩だと気づきました。
