くらし 巻頭記事 人が動けば まちが動く(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県宮若市
- 広報紙名 : 広報みやわか「宮若生活」 No.234 2025年7月号
人が関わり、声を上げ、手を動かす。そんな一歩の積み重ねが、地域を少しずつ変えていきます。まちのにぎわいを支える人たちの挑戦の現場を、少しだけ覗いていきます。
7月18日、19日に福丸夏祭り、福丸祇園祭が行われます。福丸地区で長く親しまれてきた「山笠」と「夏祭り」を通して、地域の絆やにぎわいを次世代につなごうという取り組みが続けられています。
これからも祭りを続けていくため、若者が主役になれる場づくりや、地域資源を活かした運営、補助金の活用など新たな挑戦も始まっています。伝統を守るだけでなく、時代に合わせて少しずつ形を変えながら、地域の人々が力を合わせて創り上げる『宮若の夏』。その舞台裏には、課題解決に立ち向かう真摯(しんし)な姿と、未来へのまなざし、そして地域の団結を信じる強い意志が存在していました。
◆福丸山笠保存会 運行委員長
石橋 翔 Sho Ishibashi
地域の誇りとして長年受け継がれてきた「山笠」。その伝統を未来へとつなぐには、子どもたちや若い世代の関わりが欠かせません。一方で、資金不足など現実的な課題にも直面しています。知恵を出し合いながら、地域全体で守り続ける。そんな人々の思いと、課題に立ち向かう地域の挑戦に迫ります。
◇若い世代に伝える誇り
「山笠って、やっぱり地域の誇りなんですよね。昔からずっと受け継がれてきた伝統行事ですけど、それをこれからもつないでいくためには、子どもたちや若い世代の関わりが本当に大事だと思っています」。
そう話すのは、福丸山笠保存会の石橋さん。福丸祇園祭の山笠運行を担う中心人物で、地元の伝統を未来へと受け継ぐため、日々奮闘しています。
「今回は、小学生から高校生まで、できるだけ多くの子どもたちに山笠に触れてもらえるように工夫を凝らしました。たとえば、山をロープで引っ張る『山引き』への参加を呼びかけたり、中学校の美術部に飾り作りを体験してもらったりと、いかに子どもたちに楽しんでもらえるかを考えたんです。また、新たな取り組みとして、中学生や高校生を対象にした運行体験も始めます。初めての試みなので、どれくらいの参加があるか分かりませんが、もしこの体験がきっかけで将来、彼らが実際の山笠に関わってくれたら、それだけで十分に成功だと思います」。
実際に声に出して掛け声をかけ、全身を使って山を引く。そうした経験が、祭りを『自分ごと』として感じる大切なきっかけになるといいます。
「子どもの頃にそんなふうに関われたら、『これは自分たちの山笠なんだ』っていう意識がきっと芽生えると思うんです。僕自身、小さな頃からいろんなお祭りに参加してきましたが、地元の山笠の記憶だけは鮮明に残っていて。やっぱり楽しかったからなんでしょうね。だから、今の子どもたちにも同じように感じてほしいし、楽しんでほしいんです」。
◇地域で支える、未来につなぐバトン
「山笠って、ただの行事ではなくて、地域の絆や誇りを次の世代に手渡していく大事なバトンなんだと思います。だけど、そのバトンを渡し続けていくためには、現実的な課題もあって。やっぱり資金面の問題は年々大きくなってきています。飾りの材料費、山笠の修繕費など、かなりの費用がかかるんです。でも、昔に比べて地域の寄付だけではまかないきれなくなってきているのが実情です。
そこで、みんなで知恵を出し合い、少しずつ新しい仕組みを取り入れようとしています。たとえば、寄付をしてくれた方にオリジナルTシャツを贈るといった案も出てきています。資金集めの方法も、ただお願いするだけでなく、応援してもらえる形にしていくことが大切なんだと思います。子どもたちにもそうした裏方の取り組みを知ってもらって、山笠は『見て楽しむもの』だけじゃなく、『自分たちで守っていくもの』だって感じてほしいですね。
そうやって、この山笠をこれからも地域みんなで守り続けながら、伝統文化としても大切にしつつ、次の世代にしっかりとバトンを手渡していけたらと思っています」。