しごと 築上町の農業ここがすごい

築上町の基幹産業である農業。今まで不定期に町の農業の特色をご紹介してきましたが、まだまだあるあるすごいところを今回も深掘りしてご紹介

■町の農業といえばやっぱり液肥! 町で初!! 特許権2件取得
町では、し尿を発酵させた「液肥」を製造・販売し、町内で肥料として使用してもらうことで、有機系バイオマス資源を農地に還元する「資源循環型農業」を推進しています。全国的にもめずらしいこの取組は、年間の視察受入れ8件、学校などでの循環授業12件、展示・講演会3件、受賞2件、専門誌や先進事例集への掲載5件と注目を集めています(令和6年度)。

◇全国初の液肥濃縮施設
液肥には食べ物由来の固形分が含まれています。肥料を散布する装置にこの固形分が詰まるため、ハウス栽培の作物に使用することができませんでした。それを改善するために町は令和2年度に液肥の濃縮施設を建設し、固形分を含まず、肥料成分を濃縮した「濃縮液肥」の製造を始めました。「濃縮液肥」は従来の液肥に比べ、散布量が少なく済むうえ、水に溶かした肥料を給水装置で与えることが一般的なイチゴなどの作物にも使用できます。

◇産学官連携の共同研究の成果、町初の共同特許権取得
令和2年度から4年度まで、福岡県リサイクル総合研究事業化センターの支援を受けて、大学や民間企業との共同研究「濃縮バイオ液肥製造に関する事業化プロジェクト」を実施しました。そのプロジェクトの中で濃縮液肥の製造装置と製造方法に2つの発見がありました。1つは、液肥の温度、pH、流量などを変えることで、濃縮液肥に含まれる窒素の組成比を変えられるということ。もう1つは、装置の洗浄に肥料成分のひとつである硝酸を使用することで洗浄液も液肥として使用できるということです。
この2つについて、令和4年度に三菱ケミカルアクア・ソリューションズ(株)を代表者として、築上町、九州大学の3者で特許出願したところ、令和7年2月10日に共同特許として登録されました。町の発明者は産業課の太田さんで、特許権者は町です。職員の職務発明による特許権を町が取得するのは初めてのことです。

◇濃縮液肥(大地の力築肥4号)は誰でも購入できます
濃縮液肥は町内外の農業者や家庭菜園をしている方に広く販売しています。購入を希望する方は、産業課資源循環係(【電話】56-0780)までご連絡ください。

■ちょっとお話聞かせてください
発明者の1人! 産業課 資源循環係 太田さん

◇特許が取れた気持ちは?
令和5年3月から2年間結果を待ち続けていたので、とてもホッとしました。関係者の皆さんの支援の賜物と感謝しています。築上町初の職務発明者になることができて光栄です。

◇液肥事業に力を入れる理由は?
町のし尿処理コスト、農家さんの肥料コスト、そして(従来の水処理に比べて)環境への負荷も下げることができる、一石三鳥の事業だからです。

◇液肥事業に対する思いを教えて
町外出身ですが、液肥の研究をしていた大学時代からサンプル採取のために町を訪れており、液肥事業に関わりたくて入庁しました。町の資源循環型農業は30年と長く続いているうえ、新しいことに取り組む姿勢が高く評価されており、職員として事業を支える一員であることをうれしく思っています。

◇今後めざすことは?
液肥事業で町の持続可能な農業の発展に取り組んでいきたいです。特に濃縮液肥は、農家さんだけでなく、家庭菜園をする方にも利用してもらえるよう、より身近で購入しやすい体制を整えていきたいです。

■町の資源循環型農業の歩み
◇平成5年度
第1液肥製造施設竣工。旧椎田町分し尿の液肥化がスタート

◇平成14-15年度
町職員が講師となる循環授業がスタート。自校式炊飯の米飯給食がスタート。液肥栽培米シャンシャン米“環”が学校給食に利用される。

◇平成29年度
第2液肥製造施設竣工。旧築城町分し尿の液肥化がスタート

◇令和2年度
リ総研の共同研究プロジェクト開始(~3年間)。液肥濃縮施設竣工(年度末)

◇令和3年度
液肥の濃縮がスタート

◇令和4年度
共同特許出願

◇令和5年度
資源循環システム表彰で受賞(三菱ケミカルアクア・ソリューションズ(株)・町・九州大学)。肥料登録完了(大地の力築肥4号)

◇令和6年度
濃縮液肥販売スタート。県循環型社会形成推進功労者知事表彰で受賞(共同研究代表者の三菱ケミカルアクア・ソリューションズ(株))。国内肥料資源利用拡大アワードで奨励賞を受賞(町)