くらし 【人権教育No.335】ともに生きる

■「アイヌ文化を知る」
私の好きな漫画に野田サトル氏の『ゴールデンカムイ』という青年漫画があります。明治末期の北海道を舞台に、日露戦争帰りの杉元とアイヌの少女アシリパが出会い、埋蔵金を探すという物語です。この物語は、冒険とサバイバルを軸としたフィクションでありながら、歴史的事実を物語の背景として、悲劇としてだけではなく、アイヌの人々の強さと誇りを鮮やかに描いています。この作品で特に印象的なのは、アシリパが「私たちは身の周りの役に立つもの、力の及ばないものすべてをカムイ(神)として敬う」とアイヌの自然と共に生きる暮らしを教えてくれることです。動物を狩るときの「カムイへの感謝」アイヌのチセ(住居)、アイヌの言語、コタン(村)、儀式や伝統衣装、刺繡、アイヌの料理の数々が描かれています。
日本に古くから暮らしてきた先住民族であるアイヌの人々は、長い間、文化や言語を尊重されず、差別を受けてきた歴史があります。先日、研修でアイヌ民族について話を聞く機会がありました。現代はアイヌ語を日常的に話す人はほとんどいないそうです。そのような状況の中でも、アイヌの文化を守り、次世代へと繋いでいこうと、伝統的な歌や踊りの継承、工芸品の制作など、アイヌ文化の普及に力を注いでいる様子が伝わってきました。
この物語や研修を通じて、私は、アイヌの知らなかった文化に触れることの大切さと楽しさを知りました。その歴史と現状への理解を深め、文化と人権が尊重される社会の重要性を改めて考えるきっかけとなりました。

社会教育指導員 宮下法子(みやしたのりこ)