くらし 《特集》さぁ、農業を始めよう(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 佐賀県伊万里市
- 広報紙名 : 広報伊万里 令和7年3月号
伊万里市は、三方を山々に囲まれ、伊万里川や松浦川流域には平野が広がるなど、自然豊かな地形を生かした果樹や施設園芸、畜産が盛んで、肉用牛や梨などの産地を形成しています。特に伊万里牛や伊万里梨などは『伊万里ブランド』として高い評価を受けていて、ふるさと納税の返礼品の中でも人気があります。これ以外にも、いちごやきゅうり、ぶどうなどさまざまな品目が生産されています。
このように、農業が盛んな場所ではありますが、農業をしている人に目を向けると、農家数は年々減少していて、2020年前と比べて、約3割減少しています。今後いかに就農者を確保・育成し、産地を維持していくかが重要な課題となっています。
昨年3月に実施した市の農業振興に関するアンケート調査の結果では、農業後継者について「後継者はいない」「後継者は未定」が7割以上を占めていて、このままいくと産地を守ることが難しくなるだけでなく、私たちの食の将来がどうなっていくのかが懸念されます。
今回の特集では、ここ数年で就農した人を取材し、農業を始めたきっかけなどを紹介します。その姿を通して、今一度『私たちの食を支える農業』『職業としての農業』について考えてみませんか。
■親子で農業を継承
山口茂之さん(28歳)(南波多町)
Q.就農のきっかけ
私の家は、祖父の代から農業を営んでいて、私も幼少期から手伝っていました。祖父や父の姿を見たり、一緒に作業をしたりする中で、自分も同じ道に進むだろうという漠然とした思いがありました。
高校卒業後、日本農業経営大学校に進学し、22歳の時に実家に戻りました。当時、家では『なし・ぶどう・みかん』を栽培していましたが、父から「これから農業をやっていくのであれば、自分が責任を持って取り組めるよう、新しい品目の栽培にチャレンジするべき」と言われ『桃』の栽培を始めました。ちなみに桃に関する知識は全くありませんでしたが、先輩から話を聞いたり、試行錯誤を繰り返したりして、数年前から実が収穫できるようになりました。試行錯誤しながら美味しい果物を栽培していくことに農業の魅力を感じています。
Q.親子で一緒にやってよかったこと
家族なので、お互いに頼み事をするときには気持ちが楽です。情報交換もしやすく、果物の出来を分析し合うなど、多くの面で連携がとりやすいです。また、新しく取り組んでみたいことなどは、その都度話し合うようにしています。
Q.今後の展望など
先人たちが築いてきた果樹の産地を守っていきたいですし、稼げる農業を確立し、果物の魅力を伝えたり、広めたりしていきたいです。
そのためにも、新たな技術や手法を取り入れていく必要があり、特に作業の効率化につながるものは積極的に導入したいと考えています。また、収入の安定やリスクの分散など、経営する意識を持って取り組んでいます。
Q.就農するかを迷っている人に向けて
農業には良い面と悪い面あると思いますが、まずは農作業などを体験してほしいと思います。農業に限らず、何事も軌道に乗せることは大変だと思うので、まずは「やってみよう」という気持ちが大切です。
現在、農業者数は減少しているので、消費者の需要に対して生産者からの供給が追いついていないと感じます。ビジネスチャンスはあると思いますので、たくさんの人に農業に興味を持ってもらいたいです。
▽父からひと言「夢を持つことと、チャレンジ精神が大切です」
父 山口和仁さん(56歳)
息子が農業を職業として選んでくれたことはうれしかったです。
私は、20歳で就農して35年以上続けてきましたが、数年後には、すべてを息子に任せようと考えています。
私も父から農業の知識などを教わってきましたが、時代とともに新しい技術や考え方が出てきているので、そういったものをどんどん取り入れて、夢を持ち、何事にもチャレンジしてもらいたいと思います。
■農業従事者の高齢化と後継者不足の現状
市が令和5年に行った『農業振興に関するアンケート調査』の結果から抜粋しています。
調査の概要:市内に農地を所有する世帯を抽出して調査を行い、回答数は862件
▽農業従事者の年代
年代は70歳代が4割強で最も多い。全体で見ると60歳以上が9割強を占めている。
▽農業の後継者
『後継者はいない』が4割強で最も多い。全体で見ると、後継者か決まっていない割合が7割を超えている。