しごと 今日も誰かの“おいしい”のために(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県西海市
- 広報紙名 : 広報さいかい 令和7年12月号
「おいしいね!」と笑顔で食べる食卓の裏には、農家や漁師の工夫と努力があります。西海市では、産地を守り次世代につなぐために奮闘したり、規格外品を使った加工品づくりに挑戦する農家や、仲間と力を合わせて海を守りながら地元の海の幸を届ける漁師たちが活躍しています。自然に寄り添いながら続けられているこうした取組は、地域の未来を支える大切な一歩です。
本特集では、育てる・獲るだけではなく「届ける」までの農業と漁業の取組をそれぞれの現場からご紹介します。
▽西海市の農業・漁業の現状を知る。
農業経営体数/経営耕地面積推移

資料:農林業センサス、農林水産省「作物統計(面積調査)」
漁業就業者数/海面漁業・海面養殖業生産量推移

資料:漁業センサス、漁港港勢調査
▼1.法人化したみかん農園 四代続く「みかん農家」を継いで法人化へ
産地を守り次世代につなげたい
〇株式会社川添みかん園(西海町)
【電話・FAX】0959-32-9163
代表 川添真一(かわぞえしんいち)さん
東京の広告代理店で勤務後、10年前に家族で西海市にUターン。4代目として実家のみかん農園を継ぎ、令和7年8月に法人化。温州みかんと中晩柑を栽培している。
▽Uターンしてみかん園を継いだきっかけは?
東京の大学を卒業する頃、家を継ぐことを考えていたので両親に相談したところ「今は厳しいから」と断られ、好きだったカメラを学ぶため専門学校へ行かせてもらいました。それから就職、結婚して子どもを二人授かりましたが、都会での暮らしよりも自分が生まれ育った自然豊かな地元で子育てをしたいという思いと、曽祖父の代から続くみかん農家を継ぎたいという思いが強くなり、妻と両親に話をしました。妻も両親も賛成してくれたので、35歳のときに家族でUターンし、就農して今年で11年目になります。
▽みかん作りのこだわりを教えてください
こだわりというほどではないですが、JAの指導要領にできる限り忠実に、基本の作業をしています。また、みかんの木を低く育てることで作業効率が良い園地づくりを行うことと、なるべく農薬の使用を減らして環境に配慮できるよう適期の防除を心がけています。
土づくりでは、地元の畜産農家が牛フンと、しめじ工場の菌床や、とうもろこしの残さを使って製造した牛糞堆肥を仕入れていて、地域内で資源を循環させる工夫をしています。既存の肥料が値上がりしているので、まだ試験段階ですが、豚ぷん肥料も試しているところです。
▽法人化に踏み切った、きっかけと思いは?
まずは、太田和地区で基盤整備事業が進んでいるので、そこに参入することで規模拡大できると考えました。しかし、両親も高齢になり、私1人では営農が難しくなるので個人農家よりも法人化して従業員を雇用する方向性が良いかなと考えました。
あとは、農家が減り、市の人口自体も減っているので、どうにかしてこの産地を残していくために頑張らないといけないという思いがありました。個人農家としてよりも、企業としてある程度の面積や収益を上げて、産地そのものを残し、人材育成もできたらと考えています。
▽今後の展望について教えてください
現在、みかんの収穫や摘果などの繁忙期はパートの方を雇っていますが、面積が増えれば数名は常時雇用もできるかなと考えています。その際は、安定した仕事づくりのためにも、年間を通じて収穫できる他の作物の生産も視野に入れています。
農業は体力的にきついこともありますが、やりがいや充実感もあります。子どもたちに「農家の仕事は儲かるし楽しいよ」というのを見せて、職業の選択肢の一つにしたいですね。若い世代がいないと農業は縮小するばかりなので、少しでも手取りを増やす工夫や努力が必要だと思います。今は、JAや直売所への出荷、個人販売、ふるさと納税への出品をしていますが、今後はネット販売にも挑戦したいです。
