くらし 思うこと綴ります「市長コラム」

■テーマ「ながさきピース文化祭2025を彩る縁」
ながさきピース文化祭2025が始まりました。本市では、ゆかりの画家や研究者にちなんだイベントや演奏会などが予定されています。今回は開催にまつわるお話を2つご紹介したいと思います。
小浜町富津出身の関敬吾氏は、全国各地で語り継がれていた昔話の分類、類型化を行い、「日本昔話集成(大成)」として体系的にまとめた人物です。後進の研究者の一人に、小澤昔ばなし研究所の小澤俊夫さんがおり、イベントを企画していた当初は、小澤さんに講演を依頼しておりました。しかし、弟で世界的指揮者の小澤征爾さんがお亡くなりになったことで予定はキャンセル、実現には至りませんでした。
そんな小澤さんから、関敬吾氏にまつわる興味深いエピソードをお聞きしました。小澤さんがドイツに留学していた際、日本昔話を約30年かけてドイツ語に翻訳したそうです。完成間近になった時、関敬吾氏があとがきを書くと名乗り出ましたが、任せたまま関敬吾氏が亡くなられ、ドイツの大学に原稿を預けたまま月日は流れました。
ちょうど昨年、ドイツでダンサー兼振付師として活躍する関美奈子さんが、古里の富津に戻ってスクールを開く企画を進めておりました。美奈子さんにとって、関敬吾氏は大叔父にあたります。私は美奈子さんに事情を説明して、帰国する前にドイツの大学で小澤さんの原稿を探してもらいましたが、残念ながら見つかりませんでした。
美奈子さんは今年も本市を訪れ、生徒である多くの外国人ダンサーと一緒に、ダンスパフォーマンスを披露してくれます。同時期に関敬吾氏の企画展も開催されます。関敬吾氏と小澤さん、そして美奈子さん、ピース文化祭をきっかけに点と点がつながるような不思議な縁を感じております。
もう一つ、吾妻町出身の女性日本画家、栗原玉葉について。大正期、東京で活躍していた玉葉は「西の上村松園、東の栗原玉葉」と称され、美人画の世界を牽引していました。2018年に長崎歴史文化博物館であった企画展では上村松園、竹久夢二の作品とともに、玉葉の作品が会場を彩りました。中でも目を引いたのが、玉葉の下絵でした。美人画が完成するまでの試行錯誤、制作過程が垣間見られ、非常に感銘を受けたことを今でも覚えております。
10月1日から始まる「雲仙ゆかりの画家特別展」では、長崎歴文博の企画展を担当した五味俊晶さんをお招きした講演会もあります。この機会にぜひ、一時代を築いた本市出身の画家たちがいたことを、多くの人に知っていただきたいと思います。ご来場お待ちしております。