健康 健康一口メモ 468号

◆「安心・安全なまち」を目指して
西の原野中医院 野中 直道

認知症による行方不明者の数は警察庁が集計を始めた平成24年度が12,208人、その後11年間連続で増え続け令和5年度は19,039人に達しています。そのうち71.0%は届けを出した当日に見つかり、95.1%は1週間以内に発見されていますが、そのまま何年も不明な方も多数おられます。不幸にして死亡して発見される方が毎年500人前後おられます。
行方不明になって1日経つと死亡率が37%高くなるという報告があります。また行方不明になって9時間が見つかるか見つからないかの分かれ目だという研究もあります。
このように行方不明者の発生に気付いたら早期に発見することが望まれます。その為、各地で見守りネットワークが整備されてきました。
見守りネットワークを利用した場合、発見までの時間は平均15.8時間、利用しなかった場合は43.0時間という研究結果もあります。見守りネットワークの有無が行方不明者の生死を分けるとも言えそうです。
波佐見町では役場の地域包括支援センターとNPO法人「オレンジの樹」が共同で令和2年11月から「認知症徘徊あんしん模擬訓練」を行っています。
訓練の現場を歩いていると、厚着してマフラーと帽子を身に着け、オーバーなアクションでやたらとオーラを発するおばあさんが道端でシルバーカーに座っています。声をかけると、愛想よく相槌をうち名前は「ウメ」と教えてくれますが、肝心の住所や目的地などが判りません。カバンからはみ出した病院の薬袋を発見しその電話番号に連絡がとれたら「ご褒美シール」がもらえます。
他にも泣いてばかりいるおばあさん、会話が成立しないおじいさんなど色々な認知症を演ずる役者さん達(ケアマネージャーや介護施設の方々)と出会います。
ゲーム感覚の訓練を通じ、道に迷った認知症の方への対応にはどんな方法があるのかを体験すると同時に、「認知症の人は視野が狭くなっているので突然背後から声をかけて脅かしてはいけない、正面に回ってやさしく話しかける」などといった認知症の人への接し方の基本技術や、QRコードでの家族への連絡方法等を学びます。
令和7年11月29日に5回目を予定しています。皆様も是非ご参加ください。他町の方も大歓迎です。