- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県波佐見町
- 広報紙名 : 広報はさみ 令和7年9月号
◆RSウイルスワクチン(アブリスボ)を知っていますか?
まつお産婦人科
松尾 剛
RSウイルス感染症はRSウイルスに感染することによって起こる呼吸器の感染症で、感染すると4~5日の潜伏期間ののち発熱、鼻水などのカゼの症状がみられる場合があります。
約70%の乳幼児では、上気道炎の症状が数日続いたのち快方に向かうと報告されています。30%の乳幼児ではその後細気管支炎や肺炎などの下気道炎を引き起こして重症化し、強い咳やゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴、呼吸困難などの症状がみられ、ミルクの飲みが悪くなる場合もあります。
健康な赤ちゃんを含めて約2歳までにほぼ100%が感染しますが、まだ有効な抗ウイルス薬はなく、対症療法が主体です。RSウイルス感染症で入院した2歳未満の患児のうち生後6か月未満の割合は約40%で、月齢別に見た入院数は生後1-2か月が最も多い事が報告されています。また、2歳未満のRSウイルス入院患児の80-90%は基礎疾患を持っていない事から、生まれてきたすべての赤ちゃん、特に生後6か月未満をRSウイルス感染症から守るためには予防対策が重要だとされています。
赤ちゃんは生後数か月の間は体内で十分な量の抗体(細菌やウイルスを除こうとするもの)を作ることができず、免疫機能が未熟です。一方で赤ちゃんが感染症にかかりにくいのは胎盤やへその緒を通じてママから抗体の一部を受け取って生まれてくるためです。母子免疫と言い、生後数か月の間赤ちゃんを感染から守る役割を担っています。
そこで、母子免疫の仕組みを利用し赤ちゃんのRSウイルス感染を防ごうというワクチンが考え出されました。アブリスボというこのワクチンは妊娠中のお母さんに接種するRSウイルスワクチンであり、赤ちゃんのRSウイルス感染症に対する予防効果が期待されます。
妊娠24週から36週が接種可能期間ですが、より望ましい期間は妊娠28週から36週の間の妊婦さんです。少なくとも生まれる14日前に接種されれば出生直後から赤ちゃんのRSウイルスを原因とする下気道疾患を予防する事が期待できます。RSウイルス感染の入院のリスクは月齢1~2か月にピークを迎えるので、アブリスボは新生児のRSウイルス感染症を生まれた直後から予防および重症化を抑制することが期待されるワクチンとして、今後重要な役割を果たすと考えられます。
わからないことや不安に思う事、詳しく知りたいことなどがありましたらかかりつけの産婦人科医師にご相談ください。