- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県波佐見町
- 広報紙名 : 広報はさみ 令和7年9月号
■認知症にならないではなく、“認知症になることに備えよう”
7月21日、認知症希望大使の丹野智文さんが、今年も波佐見町に来てくださいました。
ネッツトヨタ仙台でトップセールスマンとして活躍中の2013年(当時39歳)に若年性認知症と診断を受けた丹野さん。現在も、トヨタでお仕事をしながら、『認知症当事者ネットワーク宮城』『おれんじドア』の代表として、認知症当事者の声を聴き、伝える活動をされています。2月に本町でも上映した、映画「オレンジ・ランプ」のモデルとなった方です。
当日は約170名の参加者と一緒に、いろいろな気づきを得ました。その様子をお伝えします。
◆交流会and講演会『認知症当事者ができる生活の工夫それを“サポートする”とは?』
▽医療・介護の専門職との交流会
医師、訪問看護師、ケアマネジャー、施設の職員、地域包括支援センターなどが参加し、丹野さんと意見交換をしました。
当事者や家族の幸せを願い、支援したいと一生懸命な専門職。本人を傷つけないようにという思いから、当事者が意思決定する機会を奪ってはいなかったか?支援体制をどうするか、の前に、当事者の話に興味を持って話が聴けているか。当事者に説明し、一緒に考えることができているか。
日頃の自身の支援を振り返り、共に気づきを得た時間となりました。
▽当事者との交流会/参加者交流会
お昼ごはんを食べながら、今度は認知症当事者との交流会。はじめは不安そうな表情でご家族の後ろをついてこられた当事者のみなさん。丹野さんに不安を話し、「だ~いじょうぶだよ!何にも変わらないから!」「できるよ!」と言われ、どんどん表情が明るくなられました。
「胸をはって、認知症当事者ですと言って生きていきます」とキラキラした笑顔で出ていかれる姿に、とても勇気をもらえました。
午後の講演会終了後も参加者と交流会を行い、丹野さんに直接質問してお話を聞くことができました。
▽講演会
午後は、町内外から集まった参加者へ向けて、大ホールで講演いただきました。認知症と診断されてからの葛藤、どうやって生活したらいいかの情報がなくて困ったこと、自分で工夫したこと、偏見は自分や家族の心の中にあることに気付いたことなど、経験からの気づきを教えていただきました。
福岡県若年性認知症サポートセンターの阿部かおりさんとのセッションでは、認知症の当事者や周囲の人ができる生活の工夫について、具体的に教えていただきました。
◆当事者ができる工夫
◇約束ごとや予定を忘れてしまう!
→「薬の時間だよ~」「パソコンを持っていってね」など、アラームに登録し、音と視覚で今からやることを気付けるようにする。
→その日の予定を、1日に1ページずつノートに書く。
◇物の名前が分からなくなる
→chatGPTを使ってみる。例えば、丹野さんは「ピアス」という言葉がどうしても思い出せなかったときに、「女性が耳につけるアクセサリーは?」という言葉と写真を入力し、「ピアス」と教えてもらったそう。
◇道に迷う
→グーグルマップに教えてもらう。今どこにいるのかが分からないときは、ライン電話で周囲の様子を撮影して「ここにいるよ」と伝えると、自分がいる場所が分かってもらえる。
◇どのコインロッカーに荷物を預けたか忘れてしまう
→前、両側、後ろ、と写真を撮っておく。見る方向が変わると分からなくなるので、いろんな角度から撮っておくことが大事。
スマートフォンは脳の一部!使いこなせるようになると、認知症になってもほとんど困らなくなる。認知症になる前から、使いこなせるように備えることが大事!!
◆家族や周囲ができること
◇できることや役割を奪わない/家庭内に居場所を作ること
「失敗させないように」と家族や周囲がなんでもやってしまうと、自信がなくなり、意欲低下やうつ、家族への依存、怒りっぽくなるなど、本人も家族も大変になる。失敗するから工夫ができる。
財布や携帯を取り上げてはだめ。工夫して、自分で管理して、できることや笑顔が増えると、家族も楽になる。家庭の中に、居心地のいい居場所があることが一番大切。
問い合わせ:地域包括支援センター
【電話】85-2976