健康 健康一口メモ 471号

◆ピロリ菌感染症
はすわ診療所 別府 俊治

「ピロリ菌」という言葉は検診などで胃の検査を受けたことのある方であれば聞いたことがあるのではないでしょうか。
ヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)は1983年にオーストラリアの学者が発見した細菌です。胃の中は強い酸性であるので、細菌類は存在できないと思われていましたが、ピロリ菌は特殊な酵素であるウレアーゼを生成し、アルカリ性のアンモニアを自ら作り出して胃酸を中和することで強い酸性の胃の中でも生存することができます。そして胃の粘膜内で慢性的な炎症を繰り返します。
そのピロリ菌ですが、日本では約3000万人の感染者がいると言われています。ピロリ菌は不衛生な環境下での感染や、経口感染すると言われていますが詳しいことは不明です。ピロリ菌に感染しても通常では症状はなく、感染者全員に何らかの病気が発症するわけではありません。しかし長期の感染で、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんの原因となることがあります。ピロリ菌の感染診断には、胃内視鏡検査が必要です。内視鏡検査で感染がある所見があれば、迅速ウレアーゼ試験、尿素呼気法試験、便抗原検査、血液、尿中抗体検査などを行い、感染を確定させます。尿素呼気試験が最も精度の高い検査とされています。感染が確定したら、除菌療法の開始となります。除菌することにより、胃がんの発生率は約1/3に減少し胃潰瘍、十二指腸潰瘍再発をほぼ抑制します。そのほか、マルトリンパ腫治癒や、特発性血小板減少性紫斑病の血小板上昇、過形成性ポリープが縮小、消失したり等様々な効果があります。除菌の方法ですが、胃酸を抑える薬と抗生物質2種類を1週間内服し、再度先に挙げた検査で、陰性になったことを確認して、除菌が終了となります。成功しなかった場合、抗生物質を変更して、二次除菌することもあります。
除菌成功後も胃癌の発生率が下がるのですが、発生しなくなるわけではありません。萎縮性胃炎は残存しますので、定期的な胃内視鏡検査は必要です。ピロリ菌を除菌することで、次世代への感染予防することにより、胃がんの発生を抑えることができます。