- 発行日 :
- 自治体名 : 熊本県菊池市
- 広報紙名 : 広報きくち 令和7年3月号
■未来に残す遺産づくり 江頭 実
・歴史的に米作りが盛んな本市には、江戸時代からのいくつもの井出(農業用水路)があり、その歴史的意義から世界かんがい施設遺産に認定されています。その中の一つ、古川兵戸(ふるかわひょうど)井出は水不足に苦しむ地元農民が、大分の山奥から手掘りのトンネルを掘り進み、文字通り命がけで作り上げたものです。
・その古川兵戸井出の水流を活用した小水力発電所が、先日戸豊水(とりゅうず)区内に完成しました。10~3月の農閑期のみの運用ですが、約45メートルの落差から生まれる電力は年間約28万kw。実に50世帯分の年間電力使用量に相当します。
・この事業主は「(一社)こども水力発電所」(福岡市)で、事業規模は1億円。収益の一部は地元に還元され、管理や修繕費用などに充てられる仕組みで、地元の金銭的負担は原則ありません。これが可能になったのは関係者の理解と協力のおかげです。社会事業として取り組まれた当社の素晴らしい理念。土地所有者の善意のご協力。使用許可を与えた井出管理組合のご理解。最後に地元区民の皆さんのご協力。このように、関係者が大きな視点で全体の利益を考えたことが決め手でした。
・この施設は今後市内外の子どもたちに、生きた教育の場として活用していきます。「自然の恵みの素晴らしさと、それを生かすのは自分たちの工夫次第」まさにSDGsの本質です。このような地域還元型の施設は珍しく、今後見学者が増えればカフェや民宿ニーズも期待されます。命がけで井出を作られた先人も心から喜ばれることでしょう。寒風の中、谷あいの集落に射し込んだ陽光が、ことのほか温かく、まぶしく感じられました。
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