- 発行日 :
- 自治体名 : 大分県杵築市
- 広報紙名 : 広報きつき 令和7年10月号
■「差別を知り、自分事として考える」
「こんないい映画をもっと多くの市民に観てもらいたい!」これは、8月の『部落差別等あらゆる不当な差別をなくす運動月間』中、杵築市隣保館と市立図書館との合同企画、映画『破戒』上映会に参加した市民からの声です。この映画は、島崎藤村原作で、これまで2度映画化され、今回が3回目の映画化となり、部落差別問題を世に問い続けてきた作品です。
父親から被差別部落出身である出自を隠し通すよう強い戒めをうけていた主人公が、地元を離れ、小学校の教師の職に就き、地域の人々や子どもたちから慕われていました。しかし、出自を隠していることを悩み続け、いろいろな出会いを通して、ついに父の戒めを破り子どもたちに出自を語ります。そうすることで職を辞し、許嫁(いいなづけ)と共にその地を去らねばならなくなりました。カミングアウト時の真っ直ぐな主人公の言葉、「先生は先生や!」と心から慕い、恩師との別れに涙する子どもたちの姿、親友同僚教師が、主人公の立場を理解した後支え続ける姿など、心震わせられるシーンがたくさんある見応えのある映画でした。
明治4(1871)年、いわゆる「解放令」が出されて150年以上、大正11(1922)年に全国水平社が設立されて100年以上がたった現在でも、部落差別という不合理な差別は、深刻な社会問題として続いています。結婚、就職という個人に関わる差別はもちろん、土地取引等における差別事案も起こっています。平成28(2016)年には「部落差別解消推進法」が施行され、全国民をあげて一日でも早い差別解消実現を目指す取組も行われていますが、依然としてこのいわれのない差別は存在します。
先の映画上映会に一人の高校生が参加し、「こんなおかしな差別はなくさないといけない」と感想を残してくれました。同時に行った人権パネル展にも多くの中高生が足をとめ見入ってました。この若者たちのように、私たち一人ひとりが、この不合理な差別の現実を知り、自分事として考え、伝え、語り合っていく、そのことが差別や偏見をなくし誰もが笑顔で暮らせる社会の実現につながると思います。それを信じ、これからも学び、伝え続けていきたいと改めて感じた今年の夏でした。
〔社会教育課、人権啓発・部落差別解消推進課、隣保館〕
