イベント 都城島津伝承館特別展「怪異の受容と南九州 歴史の中にいる妖怪・おばけたち」

「怪異」と聞くと、皆さんはどんなイメージを持ちますか。
現代において、怪異という言葉は怪奇現象や奇跡的な出来事、化物、妖怪、幽霊などの幅広い範囲に対して使われています。
しかし、歴史史料に記録されている怪異は、必ずしも現代と同じ意味ではありません。記録や説話、絵画に現れる怪異は、各時代の社会情勢や人々の思想信仰などのさまざまな要素が影響しながら変化してきました。怪異に関する史料群は、それらが生み出された時代や地域の社会・文化の様相を明らかにする重要な手がかりです。
都城を含む島津領には、怪異に関する事柄が記された史料が複数残っています。そこに見られる数々の不可思議な出来事は、戦の守り神として信仰の対象となったり、一族や領民を脅かす怨霊として恐れられたりと、その時々で異なる性質の存在として受け止められていました。
本展では、各時代の人々と怪異との関わりを歴史史料や文学・美術作品を通じて概観し、それを踏まえ島津家・北郷家(都城島津家)が怪異をどのように受け止めて領内の政や文化活動に反映させてきたのかを紹介します。

■人と怪異の関わり
怪異とは、元は前漢の儒学者董仲舒(とうちゅうじょ)が唱えた天人相関説(てんじんそうかんせつ)に基づいた概念で、怪異や災害は皇帝の失政を戒めるために「天」が引き起こすものと説かれています。
この思想が日本に伝わったのは、天武天皇(不明〜686)の頃です。日本では為政者の失政を戒める「天」の思想は定着せず、怪異は、神道の祭祀を行う神祇官(じんぎかん)と陰陽道を司る陰陽寮(おんようりょう)が行う占いによって、その正体や意味が判断・認識されていました。当時怪異と認定されたのは、火山噴火や地震、干ばつといった自然災害や動植物に生じた異常、特定の場所での怪音発生、地鳴りなどの現象が多数を占めていました。こうした怪異は時代が移り変わるにつれ、次第に説明のつかない事象を引き起こす存在である「妖怪」の姿として人々の中で形作られていくこととなりました。

■近世における怪異譚(たん)
近世に入ると、怪異に対する政治・文化面の動きが大きく変化していきます。
江戸幕府は怪異に対する管理に一歩引いた姿勢をとり、私的な祭祀(さいし)を行うことで地域社会の安定を図る動きが各地に見られるようになりました。一方、文化面においては、妖怪たちに個別名称が付けられるようになり、俳諧や説話、絵画などが盛んに制作されました。島津領においても、複数の怪異現象を取り上げた説話集や絵巻などが残されています。

■都城島津家に残る怪異の記録
都城島津家伝来史料には、領内で起こった怪異に関する記録が残っています。主なものとして、山村の河童伝承や「庄内地理志」に記されている第十代北郷時久(ほんごうときひさ)の長子・相久(すけひさ)の怨霊譚、寛永18(1641)年12月6日の役所日記に登場する安永で起こった怪異騒動などが挙げられます。こうした記録が残された背景には、怪異・妖怪の伝説や物語などの全国的な普及のほか、非業の死を遂げた人物の怨霊化とそれを鎮めるための祭祀の構造が存在したと考えられています。

■講演会「怪異と妖怪」
日時:11月2日(日)13時30分~
会場:都城市コミュニティセンター
講師:兵庫県立歴史博物館 学芸課長 香川 雅信(まさのぶ)さん
定員:70人 ※申し込み順
申込み:10月7日(火)から、申し込みフォームまたは電話で
都城島津邸【電話】23-2116

■特別展の概要
会期:10月11日(土)〜11月24日(月)
※月曜日は休館(祝日の場合はその翌日)
開館時間:9時〜17時
※入館は16時30分まで
観覧料:一般500円(400円)、大学生・高校生400円(300円)、中学生以下無料
※( )内は20人以上の団体料金。期間中、市立美術館特別展「植田正治 写真することがとても楽しい」展の半券を提示すると観覧料割引(団体料金)。11月3日(月)(文化の日)・23日(日)(島津発祥まつり)は観覧料無料
※詳しくは、市ホームページを確認ください

問い合わせ:都城島津邸
【電話】23-2116