くらし 【特集】空き家、どうしよう。(1)

皆さんの住んでいるところに「空き家」はありませんか。
全国の空き家は約900万戸に達し、これは住宅総数のうち13.8%を占めます。
今回の特集では、空き家がもたらす問題と、その解決策を探ります。

国分川内にある空き家を見つめるのは、同地区内に住む矢野義和さん(65)です。「瓦が落ちてきそうになって危ないので、業者に頼んでネットを付けました」と馬小屋として使っていたという建物を指さし「高所で崩れそうな場所なので結構費用がかかりましたが、通行人にけがをさせてからでは遅いから」。矢野さんは来年1月、この空き家を解体する予定です。

■空き家を考える
矢野さんが空き家のことを考え始めたのは還暦を迎えた頃。第二の人生を始める上で、今からやるべき事を書き出したときに真っ先に思い浮かんだのが「母が亡くなり空き家となっていた家をどうするか、ということでした。娘たちにも、『お父さんの代に全て整理してください』と言われましてね」と振り返ります。
矢野さんは早速法務局に出向き、資産の名義を変更。その後市役所で空き家対策の相談をし、具体的に動き始めます。「はじめは賃貸、売却ができないかと考えましたが、築70年を超えている上に生活道路が狭いなど場所も悪いので断念しました。昨年からイノシシも出没しているようで、このままでは地域の人にも迷惑をかけると思い、解体を決意。更地にした後は農地として活用する予定です」と話します。「相続登記の問題や近隣の迷惑になることなどを理解していない人が多いから、空き家を放置しがちなのかも。一生に一度あるかないかの事ですからね。まずはこんな風にしましたよと、周りの人に私の経験を話すようにしています」とほほ笑みます。

■ほぼ4分の1が空き家
総務省の住宅・土地統計調査(令和5年)によると、本市の空き家は1万6780戸と推計されており、市全体の住宅戸数7万4040戸に対する空き家率は、約23%と高い状況にあります。
空き家を管理せず放置すると、景観の悪化や悪臭・害虫の発生、犯罪リスクを高めることにつながります。さらに空家等対策の推進に関する特別措置法により、著しく保安上危険となる恐れや、著しく衛生上有害となる恐れがあるなどの早急な処理が必要な『特定空家等』、そのまま放置すれば特定空家等になる恐れがある『管理不全空家等』として勧告を受けた場合、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、土地の固定資産税が最大6倍になります。空き家は個人の財産であり、所有者・管理者は空き家を適切に管理する責任があります。今こそ、空き家のこれからについて考えてみませんか。