- 発行日 :
- 自治体名 : 鹿児島県霧島市
- 広報紙名 : 広報きりしま 2025年12月上旬号
【家のこれからを考える】
住宅は増え、人口は減る。このミスマッチが空き家問題を生んでいます。
相続や管理の備えを早めに進め、古い家の価値を見直すことで、住まいの未来は変えられます。
あなたの家の「これから」を一緒に考えましょう。
日本では戦後の住宅不足を背景に、住宅戸数が増加し続けてきました。一方で人口は平成20年をピークに減少が続き、いまや住宅戸数は総世帯数を上回っています。
■なぜ空き家は増える
人口減少に加え、就職などで農山村部から若者が流出し、過疎化が進んでいく中で住宅が放置され空き家になる。空き家が増える原因は他にもあるのでしょうか。
「『夢は新築マイホーム』って聞いたことありませんか。日本人は新築志向が強いんだと思います」と話すのは、市空家等対策協議会の委員を務めるフレーム涼子さん(50)です。
隼人町出身のフレームさんは、イタリア留学中に現在の夫と出会い、以来ヨーロッパを中心に十数年を海外で過ごしました。「日本では家の価値は年数を重ねるごとに下がっていきますが、私が暮らしていたイギリスなど欧米は逆です。家は古くなればなるほど価値が上がるという〝文化〟があります」と話します。「欧米には街並みを守る文化もあり、古い建物を勝手に解体できません。例えば海外で撮影した写真は、年代が違ってもあまり大きな変化はなく、人の服装の流行で分かる程度。多くの人が家を移り住み、内装をリフォームして自分好みに替えていくのが一般的です。そうした暮らしを見てきたので、日本に戻ってみると新築住宅の多さに驚きました」と続けます。
■空き家になる前に
「イギリスの建物は石造、日本は木造が主流という違いから耐久性が異なるなど理由はあるでしょうが、今なお残る神社仏閣のようにきちんと管理すれば、もっと長く住める家がたくさんあると思います。私も実家を少しずつ、自分好みにリフォームして暮らしています。新築を建てるよりずっと安く、理想の内装に替えられて気に入っています。新しい物より古い物が好きという私の好みもありますが、もっと多くの人に中古住宅の価値を知ってもらい、『古い物も良い』という意識改革が必要だと思います」とフレームさんは話します。「とはいえ、染みついた意識を変えるのはなかなか難しいと思います。今すでにある空き家をどうするかに加えて、今住んでいる家を空き家にしない取り組みを進めていくことも大切です。元気なうちに家をどうしていくか家族で話し合っておくべきです。『どうせ継がないだろう』『解体したくないのでは』という思い込みも、話してみると案外違ったりするものですよ」
■家のこれからを考える
国土交通省が行った令和6年空き家所有者実態調査によると、空き家を取得した経緯は、約6割が相続によるもの。親など家の所有者が亡くなった際に、別の場所に住む子どもらが相続するといったケースが多く、そのうち4割は車や電車で1時間以上かかる遠隔地に住んでいます。そのため、十分な管理がなされていない空き家が多いこともうかがえます。同調査では、相続前に家族で話し合いなどの対策をした場合、対策をしなかった場合に比べ「空き家のまま」の割合が約16ポイント下がっており、売却や別荘として利用するなど活用が進んでいることが分かります。すでに空き家を所有している人は「空き家のこれから」を、空き家を所有していない人も「今住んでいる家のこれから」を、家族で話し合ってみませんか。
[INTERVIEW]
■趣を生かした家に
○空き家をリノベーションして住む家族
新村浩一さん・愛さん家族
築100年を超える実家に住んでいたからか、梁(はり)がむき出しになっているような家に住みたいと空き家を探していました。中古物件のリノベーションであれば、固定資産税が低く抑えられることも魅力でした。息子の校区が変わらない所を探し回り、やっと出会った今のわが家。太めの梁を生かしつつ、内装は全て新しくしました。家に来られる方は外見とのギャップに驚かれますね。夕暮れ時の街並みに明かりが灯(とも)る景色も気に入り、窓を大きめの物に変えて家族で楽しんでいます。
■エンディングノートで安心
○「わが家」のエンディングノート利用者
和田幸雄さん(73)
「建築指導課、各総合支所の窓口で配布しています。」
昨年知り合いから教えてもらった『「わが家」のエンディングノート』。うちも空き家になってからでは困ると思い書き始めてみると、事前に考えておくべきことがこんなにあるのかと驚きましたが、一つずつやっていかねばならないなとも思いました。家の情報などを整理でき、もしもがあっても自分の考えを残しておけるので安心です。家のこれからを親戚とも話し合う機会になり、おいが田舎で暮らしたいという希望も知ることができました。周りの人にもお勧めしています。
