くらし 【人の風景】霧島に生きる Vol.202

■子どもの笑顔が大好きパン先生
池田良行さん(75)
趣味のグラウンドゴルフの腕前はまだまだと笑う。YouTubeで「パン先生の手作りおもちゃ」を配信中。隼人町在住。

子ども会や図書館、市内外の地域イベントなどでおもちゃ作り教室の講師として、引っ張りだこの「パン先生」こと池田良行さん(75)。鹿屋市で生まれ育った池田さんは、神戸市の電気機器メーカーに就職し、コンピューターの開発に携わります。58歳の時、何か新しいことにチャレンジするなら少しでも若いうちにと思い立った池田さんは、35年勤めた会社を早期退職し、薩摩川内市の甑こしき島しまに移住。その後、郷里の鹿屋市で7年ほど暮らし、妻の実家が残る隼人町に移り住みました。
今では池田さんのライフワークとなったおもちゃ作り教室の始まりは、鹿屋市の保育園で学童クラブの先生として働いていた頃にさかのぼります。「子どもたちを遊ばせようと始めたところ、徐々にほかの保育園などからも声がかかるようになりました。普段やんちゃな子どもたちも、おもちゃ作りとなると真剣に取り組んで、上手にできるとうれしそうに報告してくれるので、私もうれしくなってはまりました。教室をやっていると、作ったおもちゃで予想外の遊び方を思いつく子もいて、子どもの発想の豊かさには本当に驚かされます。私がパン先生と呼ばれているのも、学童クラブの子が私と同じ名字のパン屋のトラックを見たと言って付けてくれたあだ名なんですよ」と目を細めます。

池田さんは自宅裏の小屋で、新しいおもちゃの構想を練ったり試作をしています。時間を忘れてしまうという小屋の中はまるで秘密基地のようで、これまで作ったおもちゃや工具、材料などが所狭しと並んでいます。「レパートリーは40個ほど。作る時は『安く、早く、きれいに』の三つを心掛けています。もし壊れても家庭で修理ができるように手に入りやすい材料を使ったり、作る時間を短くするために何度も改良しています。とにかく工夫をすることが大好きですね」との言葉通り、時にはおもちゃの部品を作るための道具なども自作するほどの熱の入れようです。
子どもに貴重な体験をさせることができたと保護者から感謝されることも多い池田さん。「先日も買い物中に『パン先生ですよね、教室に行きましたよ』と声をかけられ驚きましたが、覚えてもらえていたことがうれしかったですね」と照れたように笑います。
「準備だけで結構骨が折れるんですが、子どもたちに頼まれると断れないんですよね。でも、その分子どもたちが手作りおもちゃに興味を持って、物作りの素晴らしさや作る喜び、楽しさを知って、感動したり夢を持ってくれればいいかな」と顔をほころばせながら、パン先生は今日も秘密基地にこもって、子どもたちのためにおもちゃ作りに精を出します。