文化 資料館だより(541号)

■郷土誌
中種子町郷土誌は、昭和46年に発行されました。昭和から平成、令和へと時代が進み、中種子町は大きく進展し、さらに新たな史実を加え、より身近で親しみやすい郷土誌の編纂に取り組んでいます。
町内でも、校区や集落単位で郷土誌を編纂している地域があります。
歴史民俗資料館、中種子町立中央図書館には、地域の郷土誌家が調査し、まとめた貴重な資料が、多数保管されています。
増田の民族誌、南界郷土誌、納官郷土誌のほか深久保集落、二十番集落、伊原集落などのように、集落でまとめた郷土誌や、油久小学校や納官小学校など、学校創立の節目に刊行された記念誌などです。
昨年12月、満足山集落の記録保存委員会が発行した、「満足山の記録」も資料館に寄贈されています。この「満足山の記録」は新しい郷土誌の在り方かも知れません。
巻頭の言葉に「集落に口頭で伝えられてきた集落の営みや歩みを、形あるものにしてゆきたい。」とあります。
それぞれの時代の様子を映し撮った写真を掲載し、また、当時の満足山の記憶を、集落の人々の声として集め、様々なエピソードを交えながら記録としてまとめられています。
集落の人々が、語り部として伝える記憶は、当時過ごしたことがある人は、懐かしく思い出される事であり、その時代を経験していない人にとっても、興味深いユニークな記録誌です。
昭和時代の子ども達の「遊び」も紹介されていて、幼ななじみの友達と、外で遊ぶことが多かった当時は、遊びを通しながら、郷中教育を受け継いできたことなどが書かれています。ルールを守ることの重要性を、小さい頃から教えられ、その事が現代社会につながっていると紹介されています。
今年は、昭和の年号が始まって百年。太平洋戦争終戦から80年の節目の年でもあります。
今一度、各地域の郷土の歴史について振り返ってみることも重要だと思われます。
中種子町で現在編纂中の、新しい郷土誌の完成を心待ちにしています。

中種子町文化財
保護審議委員 濵脇 時則