- 発行日 :
- 自治体名 : 総務省
- 広報紙名 : 現在・未来のくらしに役立つ情報誌 総務省 令和7年5月号
○パネリスト
荒瀬 克己 教職員支援機構(NITS) 理事長
藤原 康弘 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 理事長
久間 和生 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) 理事長
澤田 道隆 独立行政法人評価制度委員会 委員長
金岡 克己 独立行政法人評価制度委員会 委員 ((株)スカイインテック特別参与)
横田 響子 独立行政法人評価制度委員会 専門委員 ((株)コラボラボ代表取締役)
○司会
原田 久 独立行政法人評価制度委員会 委員長代理 (立教大学法学部長)
【原田委員長代理】 独立行政法人制度がスタートして四半世紀になります。最初の10年は組織の統廃合の歴史、最近10年は業務追加の歴史と私は整理しております。今回は、(1)比較的小規模ながら、その業務の先にはたくさんの教職員がいる教職員支援機構(NITS(ニッツ))、(2)業務追加により組織が急成長してきた中規模法人の医薬品医療機器総合機構(PMDA(ピーエムディーエー))、(3)組織の統廃合の歴史を持つ大規模法人の農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構(のうけんきこう))の3法人をお招きしました。
これらの特徴を踏まえたトップマネジメントの取組について、委員の皆さまはどうお感じになったでしょうか。
【横田専門委員】 理事長それぞれに、短期間で、個性的に変革を実行されていると感じました。課題感を持って短期間で変革を進める上で、組織・職員をどのように巻き込むか、それにあたり苦労された点、主務省とのコミュニケーションの取り方など、押さえるべきポイントはどのようなところでしょうか。
【藤原理事長(PMDA)】 変革のためには、一体感を醸成することが重要です。そのためには、出向者、プロパー職員や様々な職種の職員がいる中で、組織の将来像について一人ひとりに腹落ちしてもらうことが必要です。他方、10年選手が製薬企業等に転職してしまう状況にあり、幹部候補生を育てるための戦略的人事には苦労しています。主務省との関係では、所管部局のみならず、関係者と広く、また密に連絡を取って問題点を共有し、方向を同じくすることが大事だと思います。
【久間理事長(農研機構)】 研究開発法人として、国益に資する研究が重要であることを丁寧に職員に伝えました。成功例をつくるのは大変ですが、様々な分野の関係者と連携し、実用化を進めました。トップが絶対に「ぶれない」ということも必要です。主務省との関係では、大臣をはじめ省のトップクラスを現場にお招きし、機構の戦略をお伝えして意見交換したり、毎月、担当局長との打合せを行ったりしています。
【金岡委員】 法人のマネジメントスタイルや重視するステークホルダーは誰かといった、法人運営の実情把握には時間がかかると思いますが、変革にあたってどのように現状把握をされたのでしょうか。
【久間理事長(農研機構)】 役職員の生の声を聴く機会を持つようにしました。理事を複数の研究所の担当責任者とする仕組みに変えたことで理事と研究所との議論が活発化し、私はその理事から頻度高くヒアリングを行っています。また、全国の研究拠点にも出向き、現場職員から地域の実情を把握するようにしています。
【荒瀬理事長(NITS)】 多くの職員、監事など様々な関係者と対話し、気付きを得るようにしています。小さい組織ゆえに組織を把握できている「つもり」にならないよう、自らの視座を常に疑うことも大事だと思います。
【澤田委員長】 時として、ボトムアップの取組が、トップからみると不足を感じるなど、トップダウンとボトムアップの両立は難しいと思いますが、上手にバランスをとる秘訣はあるでしょうか。また、職員一人一人が仕事の面白みを見いだすための後押しとして、どのような取組をされているでしょうか。
【荒瀬理事長(NITS)】 ボトムアップで上がってきたものをトップが仕立てていく、ボトムアップあってのトップダウンであり、その中でトップとしては、様々な意見を聞きつつ、「ぶれない」ことが大事だと思います。また、我々の仕事の面白みは、職員が企画した研修に参加した教職員の方々が変容し、その姿から職員が気付きを得て、学んでいくことにあると思っており、この学びを大事にすることや、その場をどう調えるかを常に意識しています。
【藤原理事長(PMDA)】 変革のすべてをトップに期待しないこと、ボトムアップを奨励した上で、責任はトップがとるということを常に職員に発信しています。面白みについては、我々の仕事の先にいる患者さんの生の声を全職員に聞かせて仕事のやりがいを感じてもらうことを大事にしています。また、サンキューカードなどを活用した心理的安全性の向上にも努めています。
【澤田委員長】 お話を伺い、トップが自分の方向性を示しつつ、職員とうまく対話をし、お互いが尊敬しあい、気付きを得ながらレベルアップしていくことが非常に重要で、また、ボトムアップが最後はトップダウンに結びつくのだと思いました。
また、仕事はうまくいくときもいかないときもありますが、時に称賛したり、時に練習し直す場を設けたりしながら、職員が活躍できる舞台をうまく用意できると、おのずと「やってよかった」という、やりがいが出てくるので、そういったことに日頃から取り組まれているのだと感じました。
【原田委員長代理】 本日の議論、私は、自身の役職である大学教員、また学部長の立場としても大変勉強になりました。
望ましいトップマネジメントの最初の手がかり、それは、いかにして職員の声を傾聴するか、ということではないでしょうか。次に、主務大臣や他の独立行政法人、民間企業なども含め、上下左右のコミュニケーションをとること、そして三つ目には、幹部の方々、また職員と目線を合わせていくこと、遠くを見たり、上を見たり、そうしたことを一緒にやっていくこと、これらが非常に大事だと感じました。
独立行政法人評価制度委員会では、これからも、様々な取組を積極的に支援し、後押しをしてまいりたいと考えています。本日の議論が、皆さまにとって参考になれば幸いです。
■当日の模様は、 総務省のYouTube チャンネルで公開しています。
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