くらし 《特集》明日が変わる『通いの場』(1)

年を重ねるごとに、家にこもりがちになっていませんか。高齢者は「きょういく、きょうよう」(今日行くところがある、今日用事があること)が大切だといわれており、通いの場に通うことは「きょういく、きょうよう」につながります。
今回の特集では、地域とつながり、今より元気になれる「通いの場」の魅力を紹介します。

■知っていますか?「通いの場」
通いの場は、住んでいる地域で、高齢者が日常的に集まって趣味を楽しんだり、友だちと話したり、健康づくりのために運動したりする場所です。主に地域の公民館や地区センターで活動しています。
市内には約180の団体が通いの場として登録されています。活動内容は、体操やダンス、手芸、合唱、写真撮影などさまざまで、高齢者が主体的に運営しています。

■元気の秘訣(ひけつ)が詰まった「通いの場」
現代は「人生100年時代」と言われており、平均寿命は年々延びています。高齢社会である今、健康寿命を延ばすことが重要です。いつまでも自分らしく、心と体を元気に保つためには「しっかり食べる(栄養、口腔(こうくう))」「よく動く(運動)」「社会とつながる(社会参加)」の3つが大切だと言われています。
通いの場に通うことは人と交流する「社会参加」の機会になるとともに、通うこと自体が「運動」になります。また、参加者と会話をすることは口腔機能の維持につながるなど、健康寿命を延ばすために必要な要素が詰まっています。
そんな、通いの場の良さについて、専門職の方にお話を伺いました。

■専門職も勧める「通いの場」
通いの場には、専門職派遣という仕組みがあり、リハビリテーション職や歯科衛生士、管理栄養士などの専門職に講話などを依頼できます。
実際に派遣されている専門職の山田(やまだ)さんと讃井(さぬい)さんに、通いの場についてお話を伺いました。

▽認知症予防や口腔機能の維持に効果的
山田:通いの場に通って人に会うことは、健康維持に重要な役割を果たします。フレイル予防(介護予防)の3本柱は「栄養(食、口腔)、運動、社会参加」ですが、その中で一番最初に崩れやすいのが「社会参加」です。
会社で働いていた頃は役割があったけれど、退職してからは家に閉じこもって人と会わなくなった、という人は認知症になるリスクが高いと言われています。「役割がある」ことは認知症予防にとても大切です。通いの場には「活動を考える」「書類を作成する」など役割がたくさんあります。
また、人と会って話すことは、ひとりで黙々と計算や脳トレをするよりも、相手の気持ちを考えて行動するため、認知症予防に有効だと言われています。

讃井:口腔(こうくう)機能が低下すると、栄養をうまく摂取できず、身体に不調が起こり、運動ができなくなり、そこからどんどん身体が衰えていきます。そして引きこもりがちになって、認知症のリスクも高まって…という悪循環に陥ります。口腔機能の維持は、健康と非常に密接に結びついています。
口腔機能を維持するには、歯磨きだけでなく、人と話すことも大切です。話すことで、口周りの筋肉が動き、食べ物を噛(か)むときに重要な筋肉が自然と鍛えられます。通いの場に参加して人と話す機会があることは、口腔機能の維持にとても良いことです。

▽楽しいからこそ続けやすい
山田:一人で週1回以上運動する人より、週1回未満の運動でも、スポーツグループに参加している人の方が要介護状態になるリスクが低いというデータがあります。(下グラフ参照)
「通うこと」自体も運動になるため、通いの場にぜひ参加してほしいです。
通いの場に通っている人たちは、みんな和気あいあいと楽しそうに過ごしています。運動は一人だとなかなか続きません。仲間に会うためなど、何か楽しみがあると運動も続きやすいと思います。

讃井:通いの場では、歯磨きの話だけではなく、口周りの筋肉の付け方などをゲームを通して伝えたり、だ液の重要性なども話したりしています。口腔機能の維持の重要性を伝えると「もっと早く知りたかった」と言われることも多いです。
笑うことは口周り、腹筋、全身の筋肉を使うので、体に良いといわれています。仲の良い人と好きなことをして、笑いあって健康になれるのが一番だと思います。

■Point 運動はみんなでする方が要介護状態になりにくい
スポーツグループに参加して週1回以上運動していない人は、スポーツグループに参加せず週1回以上運動している人より、要介護状態になるリスクが低いという研究結果が出ています。
通いの場で、誰かと一緒に運動をすることがおすすめです。
※スポーツグループに参加して週1回以上運動する人が要介護状態になるリスクを1とした場合

出展:スポーツによる高齢者の介護予防と政策展開に関する提言(文部科学省)

問合せ:介護保険課
【電話】381-1067