- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道歌志内市
- 広報紙名 : 広報うたしない 令和7年4月号
ブラジルで私は西芦別出身の方と親しくしていました。
西芦別の坑員だった父親が、炭砿の未来に希望を失いブラジルに移民したと聞きました。
エネルギーの主役が石炭から石油に代わる時代です。
南米の広い入植地で、炭砿労働者が開拓農民になって畑を拓くことは、たいへんな苦労でした。
慣れない環境で病を得て亡くなったかたがたも少なくありません。
その方は30歳ごろに、日系ブラジル人の北海道訪問団に選ばれました。
懐かしい友だちが会いに来るかもしれないと期待して、新聞やテレビの取材では「西芦別のSです」と名乗りをあげていたそうです。
「誰にも会えませんでした。全てが変わり果てた西芦別にも行きました。みんなどこに行ったのですか?」エネルギー革命で北海道の炭砿を離れて、海外に希望をつないだ人たちがいました。
『在伯北海道人史(ざいはくほっかいどうじんし)』の名簿に載っているだけで、歌志内からのブラジル移民が20名確認できます。
遠く南十字星の下で、望郷の念にかられた歌志内の人たちがいたことを、覚えていてほしいと思うのです。
〔地域おこし協力隊 石井(泰)〕