くらし 法テラス江差通信~離婚後の子の養育に関する民法等改正~(第189号)

令和6年5月、父母の離婚後の子の養育に関する民法等の改正がなされました。この改正法による運用は、令和8年5月までにスタートするようです。改正の目的は、父母が離婚した後も子どもの利益を確保することにあるようです。
今回の民法等の主な改正点は次の4つであると私は考えます。(1)父母が、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、子どもを養育する責務を負うなど親の責務に関するルールが明確化したこと。(2)父母の離婚後の親権に関するルールの見直し(いわゆる離婚後共同親権制度の導入)。(3)養育費の支払確保に向けた見直し。(4)安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し(父母以外の親族と子どもの交流に関するルール設定など。)。なお、この他にも財産分与などいくつかの点で改正があります。
この中で特にインパクトのある改正点は、やはり(2)の離婚後共同親権制度の導入に関するものだと私は思います。離婚後も父母双方が親権者となることができるという共同親権制度は、これまで日本では存在しなかった新しい制度になります。裁判になった場合にどの程度共同親権が認められるのか、実際に共同親権となった場合にどのような問題が生じるのか、逆に子どもにとってどのようなメリット・デメリットがあるのかといった様々な論点がありますが、実際に制度が始まらないとわからない部分があります。
併せて重要な改正だと私が思うのは、(3)の養育費の支払い確保に向けた改正です。この改正により[1]養育費の取決めに基づく民事執行手続が容易になりました。また、[2]養育費について取り決めがなくとも離婚の後引続き子どもの監護を主として行う父母は、他方に対して一定額の「法定養育費」を請求することができるようになります。「法定養育費」の額がいくらになるのかは、今後法務省令によって定められるようです。さらに、[3]養育費に関する裁判手続きの利便性が向上しました。具体的には、家庭裁判所が当事者に対して収入情報の開示を命じることができるようになったり、民事執行手続にて複数の手続き申請を1回の申立てでできるようになったりします。これらの改正により養育費の支払い確保がかなり容易になるように思われます。このあたりも今後の裁判所の動向に注目をしていきたいです。
以上のとおり、今回の民法等改正は日本の離婚事件実務に大きな影響を与えることになると思われます。12月の広報では、今回の改正が改正前になされた離婚手続にどのような影響を与えるのかについて話したいと考えております。
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法テラス江差 弁護士 樋口 直久