しごと [特集]ニセコに広がるワインの輪(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道ニセコ町
- 広報紙名 : 広報ニセコ 令和7年3月号
みなさんは今、ニセコ町のワイン産業が盛り上がりを見せていることを知っていますか?実は町には、20年のワインの歴史があります。その歴史のスタートには、羊蹄山の裾野に広がる原野をいちから開墾し、町で初めてワイン用ブドウの栽培を始めたニセコワイナリーの存在があります。
今回は、町のワイン造りの歴史を辿るとともに、新たにワイナリー開業を目指す3人の意気込みなどをお伝えします。
◆町のワイン造りの歴史を辿る
町のワイン造りの歴史は、初めてワイン用ブドウの栽培に着手したニセコワイナリーの挑戦から始まりました。
近藤地区にある、ニセコ町唯一のワイン醸造所「ニセコワイナリー」。羊蹄山の裾野に広がる原野をいちから開墾し、町の冷涼な気候の下で、ブドウの栽培から醸造、瓶詰め、販売までを一貫して手がけています。羊蹄山の麓には4つのブドウ畑が広がり、合計面積4・5ヘクタールの圃(ほ)場に約6,000本、10種類のブドウを無化学農薬・無化学肥料の有機農法で栽培しています。収穫後は、敷地内に設けられた醸造所で醸造工程を経て、希少なオーガニックスパークリングワインとなります。
有機農法によるブドウ栽培への取り組みは、「環境モデル都市」、「SDGs未来都市」を掲げる町の取り組みとも合致しており、高品質で安心・安全なオーガニックワイン造りの重要な基盤となっています。スノーリゾートとして世界から多くの観光客が訪れるニセコエリアにおいて、産業振興と環境保全を踏まえたこの取り組みは、農業者にとって魅力ある経営スタイルの提案となり、新規就農の促進やワイン市場の開拓・拡大にもつながっています。
◆ニセコ町は「ワイン特区」の認定を受けています
町では、平成26(2014)年11月に、「ワイン特区」の認定を受けています。この特区認定により酒税法が一部緩和され、小規模事業者でもワイン造りに挑戦しやすい環境が得られます。
(1)農業者が果実酒(ワインなど)を製造し、飲用に提供する場合、酒税法による製造免許にかかる最低製造数量基準(6キロリットル)が適用されず、酒類製造免許を受けることが可能になる。
(2)地域内で生産された特産品を原料として、果実酒(ワインなど)やリキュールを製造する場合、酒類製造免許取得時の最低製造数量基準(6キロリットル)が、それぞれ2キロリットル、1キロリットルに引き下げられ、酒類製造免許を受けることができる。
※酒類(果実酒)製造にあたっては、酒類製造免許の取得が必要です
◆こだわり抜いたワイン
◇環境にも人にも優しいブドウづくり
ニセコワイナリーはブドウ畑と醸造所のどちらも有機JAS認証を取得しており、白とロゼのオーガニック・スパークリングワインを造っています。このようなワイナリーは珍しく、日本ではニセコワイナリーを含め2軒のみ。環境と健康に配慮した有機栽培に徹しています。
化学肥料や化学的に合成された農薬は一切使用せず、発生した病気には有機栽培で認められている自然由来の資材を散布して最小限の防除を行います。害虫防除は殺虫剤などに頼らず、一匹ずつ手で駆除します。病気にかかってしまったブドウの実は、一粒ずつピンセットで取り除き、病気が広がるのを防ぎます。
また、房の日当たりがよくなるよう房の周りの葉を取り除き、風通しを良くします。そうすることで、朝露や雨滴、湿気をできるだけはやく飛ばし、病気が広がるのを予防します。
羊蹄山の麓でミネラルをたくさん含んだ土壌を土台に、日中は鳥のさえずりと爽やかな風に包まれ、夜は満天の星空の下、ブドウは育っていきます。
◇じっくり時間をかける丁寧なワイン造り
醸造は、フランス・パリの北東部に位置するスパークリングワインの本場「シャンパーニュ地方」の伝統的なシャンパンの製法を厳格に踏襲し、18か月間以上瓶内で二次発酵させる製造方法にこだわっています。有機栽培のブドウと、畑の自然酵母だけで瓶内発酵させることで、ナチュラルなスパークリングワインに仕上がります。また、ブドウの凝縮された果実味と酸のバランスが取れた上品な味わいになり、きめ細かい泡が長く続く高級スパークリングワインになります。
厳冬期のニセコに降り積もるシャンパンスノーのようにきめ細やかで長く続く泡立ちが自慢です。
◇「ニセコの味」の特徴
ニセコワイナリーのスパークリングワインは、複数の品種のブドウを混ぜて造っていることが特徴の1つです。単一品種でおいしいワインは各地に多くありますが、ニセコにはワイン造りの先人がいなかったため、品種の特性を求めるよりも、ユニークな組み合わせを生み出したいと考えました。
多くのワインは混醸しても2〜3品種で、それぞれの品種や特性を楽しむという考え方ですが、ニセコワイナリーのスパークリングワイン2022⁄23(スペシャルキュベ)は、5品種を混醸しています。
毎年ブドウの収穫量は違うので、それぞれの年でユニークなブドウ品種の混合比率になります。ほかにはない組み合わせにより、唯一のニセコの味が表現されています。