くらし 月形花図鑑(7)

こんにちは。月形町地域おこし協力隊の石原絢子です。
こちらのコーナーでは、月形町で生産されているお花を詳しくご紹介しています。
今回は「なでしこ」について掘り下げてみます。
月形町では楊貴妃(ようきひ)がメジャー品種でしょうか。品種も数多く、町内で生産している農家さんも多いですね。古くから日本の秋を彩るなでしこは、万葉集にも登場するほど私たちに馴染み深いお花です。その姿は、古くから多くの歌人や詩人を魅了してきました。
なでしこの語源は「撫でる子」に由来すると言われています。「撫でたくなるほど愛らしい子」という意味で、愛するわが子を例える言葉としても使われてきました。また、日本女性の楚々(そそ)とした美しさを「大和撫子(やまとなでしこ)」と表現することもあります。この言葉は、外見の美しさだけではなく、内面の奥ゆかしさや芯の強さも兼ね備えた女性像を表しています。
このお花の名の語源について調べていると、面白い俳句を見つけました。
小林一茶(こばやしいっさ)の句です。
『なでしこの 撫でしこ撫でしこ 撫でしこぞ』
これは、なでしこの花を何度も呼びかけ、その可愛らしさや愛おしさを強調している句だそうです。縁側に腰掛けた小林一茶の目の前に、撫子が咲いて風に揺れる様子が浮かびますね。
また、松尾芭蕉(まつおばしょう)も次の句を詠んでいます。
『なでしこを 撫でしこに似し 顔見れば』
この句は、撫子の花を「撫でる子」に見立て、愛らしい子どもの顔をなでしこに重ねて詠んだものだそうです。
とにかく一昔前は「可愛らしい」「美しい」=撫子に例えられていたのかもしれませんね。
このように日本でも昔から愛されていた撫子。原産国は東アジアやヨーロッパ、北アメリカなど多岐にわたり、撫子の仲間は世界中に広く分布しています。
その中でも、特に有名なのは日本固有種のカワラナデシコです。秋の七草の一つとしても知られ、古くから日本の風土に根ざしてきました。
学名はDianthus(ダイアンサス)といい、これはギリシャ語の「Dios(神)」と「anthos(花)」を組み合わせたもので、「神の花」を意味します。これは、古くから人々に愛され、大切にされてきた撫子の歴史を物語っています。
撫子は「純粋な愛」「才能」「勇敢」といった花言葉を持ちます。その美しさだけでなく、そこに込められた前向きなメッセージは、私たちに少しだけ勇気をくれるようです。
もし、道端で風に揺れるなでしこを見かけたら、ちょっとだけ立ち止まって、昔の人々がこのお花にどんな想いを込めたのか、想像してみるのも素敵ですね。