くらし 地下の研究現場から第59回 幌延深地層研究センターで使用している用語について

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター
モグ太くん:「モグ太」です。今回は、当センターでよく使う「用語」を解説します。
幌延深地層研究センター(以下、「センター」)の報告書や見学会・説明会などで使用する「専門的な用語」は、一般の皆さまにはあまりなじみがなく、多くのご質問をいただきます。
今回は、特にご質問を多くいただく「専門的な用語」の一部を解説します。

■用語の解説
▽パッカーシステム
パッカーとはゴム製の仕切りのことで、代表的な使用方法は地下水圧の計測時の「区間分け」です。
センターで実施している研究では、様々な地下深度の地下水圧を計測することが非常に重要で、研究のために深度1,000mでの水圧を計測する必要もあります。どのように計測するのでしょうか。
地下深くまで掘削したボーリング孔で、計測したい深度毎に、その上下のパッカーを膨らませてボーリング孔内を「区間分け」し、各深度(各区間)の地下水圧を計測します。

▽水圧擾乱試験(すいあつじょうらんしけん)
パッカーで区間分けをした地下の岩盤中の割れ目へ水を注入して、その区間の水圧を上昇させる(水圧で岩盤を押す)ことで、割れ目を人工的にずらし、そのずれが「割れ目の水の通しやすさの変化」などにどのくらい影響を与えるか調べる試験です。地層処分場の閉鎖後に地殻変動などで割れ目・断層がずれることにより、地下水が岩盤中の割れ目を通りやすくなり、地層の「閉じ込め性能」が低下するかどうかを検討するために必要な試験です。
この試験は、従来は専用の装置を手配するなど多額の費用と時間がかかる試験で、専用装置でも観測できるずれ幅は数mmまでが限界でした。
センターでは、令和2年に汎用装置を用いて、観測できるずれ幅も数cmと観測範囲が向上した試験方法を開発しました。この試験は鉱山開発や地熱・石油・天然ガス開発など様々な地下利用分野の課題解決に貢献することができる試験です。

▽物理探査
物理探査とは物を壊さずに中身を調べる方法です。例えると病院でお医者さんが身体を調べるときに、いきなり手術をするのではなくレントゲンやMRIなどで、体の中の状況を外から確認することを想像してもらえるとわかりやすいかと思います。
物理探査の一つで、センターでも使用している「弾性波トモグラフィ」と呼ばれる探査方法はボーリング孔内の様々な位置から発振した弾性波(打撃により岩盤に伝わった波)を受振し、岩盤内を伝わる波の速度の分布を把握し、坑道周辺の岩盤に生じたゆるみの状態を推定することができます。
「弾性波トモグラフィ」は「振動」を利用した探査方法ですが、他にも「電磁波」などを利用した物理探査の方法もあります。

▽処分概念オプション
センターで取り組んでいる主要な研究テーマの一つで、地下深くの岩盤中に高レベル放射性廃棄物を埋設するという地層処分の概念を実現するための色々な方法のことです。例えば、処分場で人工バリアを竪(たて)置きにするのか横置きにするのかといった処分方法や坑道の埋め戻し方法の違いなどについて複数の選択肢を用意しておくための研究テーマです。

▽外部委員会
一般的には、「第三者委員会」とも呼ばれていますが、当事者ではない外部の専門家があるテーマについて中立的・客観的に評価する組織のことです。センターの事業や研究成果を評価いただく「外部委員会」とは次の2つの委員会で、物理、地質、工学、地球科学、計算科学などを専門とした大学(北大、東北大、名大、京大など)の教授や原子力機構以外の研究所の研究員などで構成されています。
・地層処分研究開発・評価委員会
地層処分研究全体に関する研究開発課題の評価や、研究開発に関する事項について討議するための委員会。7名の外部専門家で構成。
・深地層の研究施設計画検討委員会
幌延深地層研究計画における研究開発について審議検討をし、客観的な評価を計画に反映し、優れた成果を効率的に得て、これを処分事業や安全規制などに反映していくための委員会。10名の外部専門家で構成。

図・写真は本紙をご覧ください。

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