- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道鹿追町
- 広報紙名 : 広報しかおい 令和7年4月号
◆いきものから時を知る
長かった冬の寒さが、日に日に解(ほど)けていくのを感じる季節です。湖面を覆っていた厚い氷は、多角形の棒状にひびが入り大きな塊から解れていき、林床に降り積もっていた雪も荒目の粒になり風に吹かれて崩れていく様は解けていくようにも見えるのです。季節が着実に春に向かっています。
この時季はまだまだ気温が氷点下にも下がる日もあるのですが、日中気温がプラスになると、途端に小鳥たちが歌い始めます。私たち人間は積雪もまだあり、雪景色からつい冬のつもりで活動してしまいがちのなか、小鳥たちの歌声に「そうか春はもうすぐそこだった」と気付かされます。小鳥たちが歌うときは穏やかな過ごしやすい陽気で「そりゃ歌いたくなるよね」といった春めいた日です。
そして、南からこの地へ渡ってきた夏鳥たちの姿を見かけると春の到来が実感となります。見かける時季は毎年だいたい前年と同じくらい、種類ごとに上旬、中旬、下旬と分かれて帰ってきます。なので、もし、カレンダーなどがなくても彼らの動向を観察していたらその時を知ることができます。去年の今頃は姿を見ていたのに今年はまだ遭遇できていない時は、多少心配にもなり、会えた時には「心配したよ。無事に渡ってこられたね」と旧友に会えた気持ちに似た感情を憶えます。これは、鳥に限らず、木の芽の膨らみ、植物の発芽からも同様です。植物たちも気温がプラス5度を超えると活動を始めるので、天候に少々左右はされますが、なかなかの精度で毎年同じように活動を始めます。生物の体内時計は驚くべき力ですね。
この季節の移ろいを、カレンダーや新聞、テレビなどから知るのではなく、自然現象から感じられるのがこの地で暮らすものとして幸せでなりません。
然別湖と山の麓ではこの季節を告げる動向も少しずつ違いがあるでしょう。ご自宅や生活する場で自然の移ろいから季節を感じてみませんか。それが、どこでも身近に感じられるのがこの町の良いところだと思います。
写真・文:然別湖ネイチャーセンター
【URL】https://www.nature-center.jp