くらし 【特集】今を受け取り、未来へ―受け継ぐ想いが、あしたを動かす。(3)

■農業を受け継ぐ
大地に息づく営み
―このまちの明日を育てる手―

◇牛を想う、その日々が、営みを育てていく。
清水町の基幹産業である農業。なかでも酪農を家業として受け継いだ兄弟がいます。兄の藤井諒也さんは大学卒業後、牛の改良に関わる会社を経て昨年帰郷。弟の将平さんも搾乳農家で経験を積み、今年帰郷しました。
(諒) もともと継ぐ気でしたが、30代になってそろそろだなと。帰ってきたからにはやるしかないので、必死に仕事を覚えています。
(将) 自分も帰ってきたかったので、兄と一緒にやろうと思いました。帰ってきたばかりなので、みんなに支えてもらいながら、できることを増やしています。
家族の背中を見て育った二人ですが、継ぐ前と今では、家業の見え方に変化があるそうです。
(諒) 実際に働いてみると、思っていた以上に複雑な仕事で、考えないといけないことが多いです。
(将) 一つ一つの仕事に、どういう意味があるのかを、もっと深いところまで考えるようになりましたね。
(諒) 牛の能力をもっと上げたいと感じるようにもなりました。遺伝的な面も意識して改良を進めたいです。
(将) 僕も兄に賛成しています。牛の健康管理や病気の早期発見に力を入れつつ、これまでの取り組みをしっかり継承したいです。
現場を理解しながら日々奮闘し、新しい挑戦に意欲的になれるのも、兄弟が隣にいてこそだといいます。
(諒) 弟は、観察力があって頼もしいです。自分も負けられないと思っているので、お互いにレベルアップしていけると良いですね。
(将) わからないことは兄に頼っています。自分で調べたことも二人で情報共有しています。
将来の牧場像について聞くと、このまちで酪農を受け継いでいく覚悟が感じられました。
(諒) みんなが働きやすく、牛と人を大切にしながら利益も出せる牧場にしたいです。それが地域貢献につながれば最高だと思います。代々続けてきた『牛を大切に飼うこと』は、ぶれずに、清水町の基幹産業としても地域を支えていくことができればと思います。自分が酪農をやりたいと思えたように、次の世代にも魅力を伝えていきたいです。
(将) ここで働く全員に活気があって、一つの目標に向かって力を合わせて頑張れるような会社にしたいです。兄も言うように、継いできたものが途絶えないよう、大事な部分は、ぶれずに次の世代につないでいきたいです。

株式会社藤井牧場 藤井 将平(ふじい しょうへい)さん(弟)
株式会社藤井牧場 藤井 諒也(ふじい りょうや)さん(兄)

◇感謝と努力の心を、まっすぐに託す。
諒也さんと将平さんが働く株式会社藤井牧場は、二人のお父さんの代から兄弟で酪農を受け継いできました。現在は、お父さんの稔さんが経営、弟の智さんが現場を担当しています。父兄弟の代では、従業員が安心して働ける職場をつくろうと法人化を進め、福利厚生や労働時間の整備にも力を入れてきました。
(稔) 地域の先輩たちに追いつきたくて必死に頑張ってきました。弟には家族という絶対的な安心感があり、なんでも頼れて協力し合えることが支えになっています。
(智) 家族経営の頃から、みんなで頑張ろうという意識を大切にしてきました。その気持ちを今も大切に働いています。
稔さんと智さんは、自分たちの親が築いてくれた基礎を発展させながら、とのつながりも大切にしてきました。だからこそ、息子さんたちに受け継いでもらいたい想いがあります。
(稔) 息子たちには、地域や多くの人に助けられていることへの感謝の気持ちを忘れず、努力を惜しまずにやってほしいです。
(智) 一人ではどうにもならないこともあるので、協力し合いながら、思いやりを大切にしてほしいと思います。
父兄弟の姿勢は、未来を担う息子たちへとしっかりと受け継がれています。

藤井 稔(ふじい みのる)さん(兄)
藤井 智(ふじい さとし)さん(弟)

日々の手の動きのなかに、
受け継がれた想いと、
確かな営みがある。

このまちの農業は、
力強く未来へと続いていきます。